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生保協がルール改正、生保と乗合代理店の慣れ合いにメス

 生命保険協会は昨年12月13日に、「保険募集人の体制整備に関するガイドライン」を改正した。今回の改正は、生命保険会社が乗合代理店に支払ってきた過度な「上乗せ報酬」の透明化を狙ったものだ。そもそも上乗せ報酬は、間接的に顧客が負担していると言える。今回のガイドライン改正により、上乗せ報酬が発生する保険商品を顧客に勧める場合には、保険を販売することで上乗せ報酬が乗合代理店側に供与されることをわかりやすく説明することが求められる。

上乗せ報酬の実態を顧客に説明

 これまで不透明だった生保会社が乗合代理店に支払う上乗せ報酬にメスが入った。
 改正では、乗合代理店が特定商品を一定期間中に販売する際に生保会社から販売手数料に上乗せして「キャンペーン」報酬が支払われる場合や、手数料に上乗せして過度な「ボーナス」報酬が支払われる場合、さらには代理店スタッフに対する表彰や研修という名目で宿泊旅行が提供されている場合など7項目に該当するときには、提示・推奨理由として、販売することで「上乗せ報酬」や「研修旅行」などが供与されることをわかりやすく顧客に説明することが明示された。宿泊旅行については「国内で実施する場合も含めて」と明記する徹底ぶりだ。契約獲得ごとに支払う販売手数料とは別に、「マーケティング・コスト」「業務委託費」「支援金」などの名目で、役務対価が曖昧なまま事実上の報酬が支給されている場合も顧客への説明が求められる。
 実は、今回のガイドライン改正からさかのぼる昨年6月9日、金融庁が生保協会との意見交換会の場で、乗合代理店に渡す上乗せ報酬の目的の不透明さや過度な高額化を問題視し、改善を要請していた。その問題意識が、今回のガイドラインの改正につながっている。

乗合代理店からは恨み節も

 ビルのオートロック等のセキュリティ技術の普及や個人情報保護法施行による顧客への接触のむずかしさ、夫婦共働き世帯の増加による在宅率の低下といったさまざまな要因により、生保会社では“主力営業部隊”だった女性営業職員による訪問型営業が弱体化。生保各社が顧客ターゲットとする若年層を取り込むためには、保険ショップとの連携が重要となっている。女性営業職員チャネルを強みとする大手生保4社でさえ、住友生命を除く3社が自社商品のみを取り扱う専属型店舗を、第一生命を除く3社が複数社の保険商品をそろえる乗合型店舗をグループ内で展開するなど、連携を加速させている。
 足もとでも、住友生命が今年1月16日に、マイコミュニケーションに3割強を出資し、関連会社化したことを発表。マイコミュニケーションは、全国に90店舗の保険ショップを展開するとともに、顧客ごとに契約内容を一元的に管理するサービスを提供している。住友生命は、全国に保険ショップ網を持つ同社のビジネス基盤を取り込むことで保険販売額の拡大を図る。
 大手生保4社は、「従来(乗合代理店に)上乗せ報酬をいっさい支払っていない」(広報担当者)と口をそろえるが、ある代理店関係者は「一部の大手生保からは、販売手数料とは別にキャンペーンやボーナスのようなものをもらっている」とこぼす。もっとも、過度な上乗せ報酬の支払いが横行していたのは、代理店チャネルを主力窓口としてきたカタカナ系や損保系、外資系の生保各社だ。
 こうした生保は、報酬を上乗せしないと自社商品を売ってもらえなくなるおそれがあるため、他社との競合を強く意識するあまり、代理店側の“言いなり”のようなかたちで報酬を上乗せしてきたようだ。その結果、販売手数料と上乗せ報酬を合算した場合、「初年度保険料を大きく超える水準の報酬等を乗合代理店に提示し、支払っている」(金融庁)実態も生じていた。ある外資系生保の関係者は、「ガイドライン改正はかえって渡りに舟」と胸をなでおろす。
 しかし、上乗せ報酬の存続危機は乗合代理店にとって死活問題。生保協会は、日本証券業協会と異なり、会員会社の自主規制機関という位置付けではなく、あくまで任意の業界団体にすぎない。そのためガイドラインも会員会社を拘束せず、違反した場合の罰則規定も存在しない。だが、ガイドラインが及ぼす業界への影響力はきわめて大きく、ある中堅クラスの代理店関係者は「いよいよ代理店淘汰の時代が来るかもしれない」と懸念する。早速、今回のガイドラインの改正を受け、生保から上乗せ報酬の打切りを宣告されたところもあるようだ。「生保各社が顧客本位の商品開発をしてこなかったせいで上乗せ報酬がやり玉にあがった」(乗合代理店関係者)との恨み節も聞こえてくる。

氷山の一角

 そもそも乗合代理店側の不満は、今回の上乗せ報酬の存続危機だけにとどまるものではない。たとえば、販売手数料の体系を適用する際の基準となる、各生保会社が示す代理店の「ランク」。その査定は、だいたい6カ月ごとに行われ、一般的に契約件数や残高、継続率(保険契約締結後、契約が有効に継続している割合)などの定量的な要素を軸に、コンプラ評価などの定性的な要素も加味しながらトータルで決まる。通常、5~8段階くらいに分けられ、最上位と最下位では、手数料率の格差も4~5倍ほど開くこともある。
 しかし、ランクが細分化していることで、なかなか最上位の仲間入りができず、「販売のインセンティブがわきにくい」と嘆く乗合代理店は少なくない。一部の生保では、ランクを数段階に簡素化しているところもあるが、ごく少数派にすぎないという。
 さらには販売手数料の体系自体にも不満の矛先が向かう。生保側の事情としては、できるだけ商品を売りたいので、販売量を基軸に手数料体系を決めざるをえない事情がある。しかし、これでは顧客の受けは良くても、販売規模の小さい乗合代理店には不利に働いてしまう。金融庁も6月の意見交換の場で、上乗せ報酬以外に販売手数料の体系についても、「乗合代理店の販売量の多寡に応じて決まるところが多く、丁寧な顧客対応やアフターフォローなどの役務・サービスの質を的確に反映していない」と警鐘を鳴らした。今回メスが入った上乗せ報酬は、乗合代理店が絡む諸問題のなかでは氷山の一角にすぎない。上乗せ報酬問題を皮切りに、生保会社と乗合代理店との取引関係に対する監督の目が強まるかもしれない。

 

kizi20180129

上乗せ報酬の透明化の次は……。