倉庫内の担保商品を一部出庫するにはどうすればよいか
(1) 倉荷証券が発行されている場合
① 譲渡担保権が設定されている場合には、倉荷証券を債務者に返還するか、または債権者が直接倉庫に出向いて倉庫業者から商品を受領したうえで、証券の変更または担保の解除と共に、債務者に商品を返還するしか方法がない。
② 質権が設定されている場合には、倉荷証券を倉庫業者に示し、内渡しの旨を記載してもらう方法(商法628条)もあるが、手続が煩雑なため、倉庫会社との間に一部出庫契約を結んでおき、一部出庫請求書の発行により出庫を行う例が多い。
(2) 倉荷証券が発行されていない場合
① 倉庫業者が自己または債務者所有の倉庫内に商品を代理占有している(代理保管または出保管)場合は、担保権が質権ならば、倉庫業者が債権者の許可を得て出庫するが、譲渡担保権ならば、債権者が直接出向いて引渡しを求めるか、または担保の一部解除をして債務者に受領させる。
② 債務者が譲渡担保により自己の倉庫内に商品を占有している場合には、債権者の同意を得れば債務者自身により自由に出庫できる。
倉荷証券のない場合の取扱いは特に問題はないので説明を省き(なお、集合物については【40702】参照)、以下、倉荷証券のある場合につき述べる。
倉荷証券を担保にとるには譲渡担保と質権との両方があるが、譲渡担保の場合には商法628条のような制度がないので、一部出庫をするには、受戻証券(商法620条)たる倉荷証券を債務者に返還するか、債権者が倉庫業者に立ち会って商品を受領し、担保解除のうえ債務者に返還するしか方法がない。このため一部出庫の必要のある商品の場合には、質権設定のほうが便利とされる。
質権設定のある場合には、商法628条により、そのつど証券を業者に呈示し、証券面に内渡しの旨記載して一部出庫ができることになっている。しかし、手続が煩雑なため、倉庫業者の本社との間に一部出庫契約を結んでいる例が多い。すなわち一部出庫をするときは、まず債務者から担保一部受取証を徴求し、それによって債権者は証券の受取欄に必要事項を記載した後、一部出庫請求書を債務者に交付し、倉庫業者はそれと引き換えに商品を債務者に引き渡すことになる。また一部出庫がなされた場合は、残余商品の出庫は一部出庫の手続によるか、または担保の解除の方法によるかしかできなくなる。
なお、倉荷証券に質権を設定する場合、その通知は対抗要件ではないが、一部出庫契約のあるときは通知義務があるとされているため、将来一部出庫が予想されるときは、あらかじめ債務者と連署して質権設定の事実を通知しておいたほうがよい。