コンプライアンス・マニュアルを作成するにあたっての考え方、留意点は何か
コンプライアンス・マニュアル作成の主たる目的は、コンプライアンスを重視する企業風土の譲成と行動規範の明確化であり、そのためには、金融機関の実情をふまえ、実効性のある具体的な内容とする必要がある。なお、マニュアルは単に作成するだけでなく、その内容が役職員に周知徹底されていることが最も重要である。そのための教育・研修体制の確立や日常業務におけるチェック体制の確立も不可欠である(金融検査マニュアル法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト参照)。
コンプライアンス・マニュアルには、①役職員としてのあるべき姿や行動の指針等を明確にした倫理的行動規範と、②金融取引において遵守すべき法令や規則を網羅的に解説した法令等遵守マニュアルとがある。このほか、違法行為を発見した場合の対処方法等についても具体的に解説する必要がある点に留意する。
また、コンプライアンス・マニュアルの策定および重要な部分の見直しについては、取締役会が承認するように金融検査マニュアルで求められている点に留意する。
倫理的行動規範は、労働条件や服務規律を定めた就業規則と異なり、金融機関の社会的責任や公共的使命を適正に遂行する観点から、倫理的価値判断基準を定めたものであり、就業規則とは明確に区別される。
倫理的行動規範の作成・活用にあたっては、以下の点に留意する必要がある。
① 行動規範の内容は、金融機関の実情を十分勘案したものとすること。なお、すべての役職員にとってわかりやすい内容となるように工夫する必要がある。
② 内容は、極力具体的に明記する。
③ 個人の権利を制限する規定を設ける場合は、労働基準法等関連法規をふまえ、慎重に取り扱う。
④ 役職員に対し、行動規範の趣旨・内容、およびその実践にあたっての自らの役割を十分に理解させること。
⑤ 行動規範の適時・適切な見直しを行うこと。
なお、行動規範に関する職員からの質問や問題提起等を受け付ける窓口・方法を明確にしておくことが必要である。
法令等遵守マニュアル作成・活用にあたっては、以下の点に留意する。
① 単なる法令等の解説ではなく、役職員が遵守すべき法令や規則を網羅的に、理解しやすいよう、具体的な事例に即してとりまとめる。
② 内容の理解のみならず、法令等に抵触した場合の経営に与えるリスクの大きさを十分に理解させる必要があるとともに、役職員が法令等違反の疑いのある行為を発見した場合の連絡すべき部署等(【10006】参照)を明示すべきである。
なお、担当業務や部署により遵守すべき法令や規則が異なることから、なるべく担当業務・部署により遵守すべき法令や規則がわかるように解説することが望ましい。