IV巻 担保 編
40730  登記事項概要証明書と登記事項証明書

登記事項概要証明書と登記事項証明書にはそれぞれ何が記載されるか。また、概要記録事項証明書とは何か

結論

登記事項概要証明書は、動産譲渡登記の記録事項のうち、譲渡動産の内容以外の事項を記載した証明書である。登記事項証明書は、登記事項概要証明書の内容に加え、譲渡動産の内容をも含む登記の全事項を記載した証明書である。概要記録事項証明書は、登記事項概要証明書と同じく、登記の概要情報を記載した証明書であるが、記載内容や交付申請先等が異なる。


解説
◆動産譲渡登記ファイルと動産譲渡登記事項概要ファイル

動産譲渡登記は、「指定法務局等」に備えられた「動産譲渡登記ファイル」に記録される(動産・債権譲渡特例法7条。なお平成25年3月現在、指定法務局等には東京法務局のみが指定されている)。一方、譲渡人の本店等所在地法務局等には、「動産譲渡登記事項概要ファイル」が備えられている(同法12条)。そして、指定法務局等で登記が完了すると、登記の概要情報(動産の内容に関する情報は含まれない)が、指定法務局等から本店等所在地法務局等に通知され、本店等所在地法務局等の動産譲渡登記事項概要ファイルが書き換えられる仕組みとなっている。本店等所在地法務局等の動産譲渡登記事項概要ファイルは、動産譲渡登記の公示を補完する機能を有するもので、動産譲渡登記そのものではない。

また、動産譲渡登記ファイルも、動産譲渡登記事項概要ファイルも、法人の登記簿とは別物である(法人の登記簿には、動産譲渡登記の内容は記録されない)。

◆証明書の種類

登記の内容を記載した証明書には、登記事項概要証明書、登記事項証明書、概要記録事項証明書の3種類がある。

◆登記事項概要証明書

登記事項概要証明書は、指定法務局等に備えられた動産譲渡登記ファイルに記録された登記事項の概要を証明した書面であり、以下の事項が記載されている(動産・債権譲渡特例法11条1項、動産・債権譲渡登記規則23条)。

① 譲渡人の商号または名称および本店または主たる事務所

② 譲受人の氏名および住所(法人にあっては、商号または名称および本店または主たる事務所)

③ 譲渡人または譲受人の本店または主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所または事務所

④ 動産譲渡登記の登記原因およびその日付

⑤ 動産譲渡登記の存続期間

⑥ 登記番号

⑦ 登記の年月日

⑧ 登記の時刻

◆登記事項証明書

登記事項証明書は、動産譲渡登記ファイルに記録されたすべての登記事項を証明した書面であり、上記の①~⑦の事項に加えて、⑧譲渡された動産の特定に関する登記事項が記載されている。

◆概要記録事項証明書

概要記録事項証明書は、譲渡人の本店等所在地法務局等に備えられた動産譲渡登記事項概要ファイルに記録された事項を証明した書面である。概要記録事項証明書には、上記の①~③、⑥~⑦の事項が記載されている(動産・債権譲渡特例法12条、動産・債権譲渡登記規則19条1項)。

◆登記事項概要証明書と概要記録事項証明書との違い

両証明書は、ともに動産譲渡登記の概要が記載されている点で共通する。しかし、両証明書は、上記のとおり参照するファイルが異なるため、記載内容が若干異なるほか、交付申請先の点、商号・本店所在地変更への対応の点、登記情報の鮮度の点でも以下のとおり差異を有する。

(1) 証明書の交付申請先 登記事項概要証明書は、指定法務局等に対してのみ交付申請することができる(登記事項証明書も同様)。これに対し、概要記録事項証明書は、譲渡人の本店等所在地法務局等に対して交付申請することができるほか、登記情報交換システムを通じて、全国の法務局でも交付申請することができる(また、財団法人民事法務協会の提供するインターネット登記情報提供サービスを利用すれば、インターネットを通じて情報を取得することができる)。

(2) 商号変更・本店所在地変更への対応 指定法務局等の動産譲渡登記ファイルは、譲渡人に商号変更や本店所在地の変更があっても変更されない。これに対し、本店等所在地法務局等の動産譲渡登記事項概要ファイルは、同法務局内の法人登記に商号変更や本店所在地変更の登記がされた場合には、これと連動して変更がなされる(動産・債権譲渡登記規則7条)。このため、譲渡人の現商号や現本店所在地を検索キーにして検索をした場合、登記事項概要証明書では、譲渡人の旧商号・旧本店所在地のもとでの動産譲渡登記は記載されない(検索結果にヒットしない)が、概要記録事項証明書には、これらの登記も含めて記載される(検索結果にヒットする)ことになる。

(3) 登記情報の鮮度 指定法務局等から本店等所在地法務局等への登記情報の通知は、指定法務局等での登記の完了後に行われる。登記事務が混雑していれば、登記された内容が反映されるまでにタイムラグが生ずる可能性がある。そのため、概要記録事項証明書に記載される内容は、登記事項概要証明書に記載される内容よりも鮮度が落ちる場合がある。