IV巻 担保 編
40709  出保管

出保管とはどのようなものか

結論

出保管とは、債務者所有の倉庫内に格納された商品を担保にとる際行われる方法で、商品の格納された倉庫を債務者から倉庫業者へ賃貸し、倉庫内の商品について債務者より質権の設定を受け、その引渡しは倉庫業者が債権者にかわって行い、その後もこれらの商品を倉庫業者に代理占有してもらう制度である。


解説

質権は要物契約であるから、質権設定契約のほかに目的物の引渡しが必要とされる(民法344条)が、この占有の移転においては、質権者は質権設定者に自己にかわって目的物を占有させることはできない(同法345条)。したがって、目的物を債務者の手元におかなければ経済的目的を失ってしまうような倉庫内の商品や原材料については、質権を設定するのが困難である。

そこで、これを解決する方法として考えられたのが、アメリカの野外倉庫に類似した出保管と代理保管である。いずれも倉庫業者に債権者のために代理占有をさせることにより、質権の対抗要件を満足させようとする制度である。

代理保管とは、商品を倉庫業者の所有する倉庫に搬入させ、倉庫業者が債権者にかわって商品を占有するものをいい、これに対し、債務者が自己の所有する倉庫をそのまま倉庫業者に賃貸し、倉庫業者は債務者の倉庫を賃借することによって商品を代理占有するのが出保管である。代理保管に比し出保管では、債務者の倉庫を利用できるため、質権としては出保管のほうを利用することが多い。

この場合、倉庫の鍵は倉庫業者が占有し、その出入れはそのつど債権者の同意を得て行うか、または範囲を定めて倉庫業者が行い、そのつど報告をするため、担保管理が安全かつ簡単な半面、質権設定契約のほかに債務者と倉庫業者間、債権者と倉庫業者間に、それぞれ倉庫の賃貸借、目的物寄託に関する保管料、目的物の引渡しならびに代理占有等の諸契約を締結する必要があり、手続としてやや煩瑣である。

したがって、占有改定による引渡しが可能な譲渡担保を締結するほうが契約としては便利なため、一部出庫を必要とする商品の場合以外には、出保管による質権設定を利用する例は比較的少ないようである。

なお、出保管の契約にあたっては、倉庫業者、債務者、債権者の三面契約によってなされるのが通常である。