金融機関にとってのコンプライアンスとは何か。なぜ、コンプライアンスの必要性がいわれているのか
コンプライアンスとは、法令をはじめ社内の諸規則さらには確立された社会規範に至るあらゆるルールを遵守することである。金融機関は、銀行法等による認可を受けて業務を行っており、経済の基盤を支える役割を担うことから、一般企業と比べて公共性が高いため、より高いレベルのコンプライアンスが求められている。また、金融システム改革の進展によりグローバル化した市場においては、国際的基準への整合性が求められているとともにルール遵守の重要性はますます高まっている。
コンプライアンスとは、法令や各種ルールを遵守することを指す。広くは、法律に規定することのできない社会倫理規範や社内規則にのっとって行動することまで含むと考えられ、企業倫理の遂行に重要な役割を果たすものである。
金融機関におけるコンプライアンスの重要性が指摘されることとなった契機としては、総会屋への利益供与事件で失った金融機関の信頼回復が求められたことがまずあげられるが、いまはそれにとどまらず、わが国の経済・社会の構造変化に対応するうえでコンプライアンスは不可欠との認識が定着してきている。行政指導が大きな役割を果たす官民一体での業界運営といった旧来のシステムから、自己責任原則に基づく企業経営と明確なルールに基づく行政といった新しいシステムへの転換が進められているなかで、国際的な基準と整合性のとれたルールの遵守の重要性はますます高まっている。ルールや社会規範からの逸脱は、予期せぬ損失や信用の失墜という重大なペナルティをもたらすことはすでにいくつもの事例が示すとおりであり、このような事態を避けるためにも、これまで国内もしくは業界内で通用してきた慣行や、役職員が「会社のため」に行ってきた行為について、グローバル・スタンダードの観点から再点検を行うことが求められている。
金融システム改革の進展に伴い、投資信託等リスク商品の取扱いや複雑な金融技術を駆使した新たな業務領域の開発などにより、金融商品・サービスに関する法的知識の習得やリスクに関する説明の必要性はさらに重要度を増している。また、消費者意識の高まりもめざましいものがあり、金融商品販売法等の関連法規も整備されてきている。こうしたなか、コンプライアンスは、単に法令を遵守するという当然の原則としてのみでなく、金融機関のあらゆる業務において生じうる法的リスクを事前に回避・排除するという、いわばリスクマネジメントの一環として、より積極的な役割を担っている。