IV巻 担保 編
40732  動産担保の評価手法

動産担保を評価する場合に注意することは何か

結論

動産担保の評価には、対象動産に関する専門的な知識が不可欠である。評価の実施にあたっては、客観性と合理性に留意し、対象動産の担保適性を見極め、適切な評価方法を採用して評価金額を算定しなければならない。その際、借手となる企業の信用状況などを考慮することも重要である。また、貸手の金融機関が単独で動産評価を行うことがむずかしい場合には、外部の専門会社等を活用する方法も検討すべきである。


解説

動産は多種多様であるうえ、不動産のようには流通価格のデータが十分に整備されていないことから、動産担保の評価手法を標準化することは容易ではない。また、流通ルートが複雑で、2次マーケットが未成熟であることが評価の実務上問題となるケースも多い。このような状況から、動産担保の評価には専門的な知識が求められるため、貸手の金融機関が単独で行うことがむずかしい場合、外部の評価会社などの専門事業者の活用も検討すべきである。

動産担保の評価にあたって注意すべき点は以下のとおりである。

◆動産の担保適性の見極め

動産担保の評価にあたっては、まず対象動産の処分性、換価価値、担保管理等の観点から、担保としての適性を判断する必要がある。たとえば、法令で免許取得者以外の販売が制限されている動産は、処分性の観点から担保適性に乏しいといえる。また、一般に原材料や製品は換価が比較的容易であるが、仕掛品や半製品は換価がむずかしいとされる。さらに、対象動産の保管場所としては、自社倉庫よりも営業倉庫のほうが担保管理面で優れているといえる。

◆適切な評価方法の選択

動産の評価を行うための一般的な評価手法には、対象動産の取得に要した費用をもとに算出する「費用アプローチ算出法」、対象動産の売買事例をもとに算出する「売買比較アプローチ算出法」、対象動産を所有することにより得られる将来の便益の現在価値をもとに算出する「収入アプローチ算出法」があるが、通常、集合動産の評価では「売買比較アプローチ算出法」が用いられる。

◆適切な評価金額

評価金額については、借手企業の事業継続を前提に一般的な取引価格を参考とした「公正取引価格」、借手企業が経営破綻した状況を想定し一定のディスカウントにより合理的な期間内に処分を行う場合の「通常処分価格」、および「通常処分価格」からさらにディスカウントを行い限られた期間内に処分を行う場合の「強制処分価格」の3種類の評価金額を状況に応じて選択する。

◆その他の留意点

(1) 動産種類の特定 まず、対象動産の種類が機械設備等の個別動産であるか、商品在庫等の集合動産であるかを区別する必要がある。個別動産の場合、対象動産が特定されており、通常、評価時点からの使用可能年数をもとに、将来価値についても算出する。集合動産の場合、対象動産を一定の種類に基づき層別したうえで、種類ごとに参考となる単価等を設定し算出する。

(2) 取引市場の有無 取引市場が確立されている動産については、当該市場における取引価格等を参考に評価金額を算出する。一方、取引市場が確立されていない動産については、実際に相対で行われている売買事例等を参考に、売買比較アプローチ算出法を用いて評価金額を算出することになる。

(3) 簿価と評価金額との関係 動産の帳簿上の簿価としては、通常、取得価額(または取得価額に加工費用を加えた金額)、あるいは当該価額に対して経過年数に応じた減価を行った金額が計上されているが、当該金額は対象動産の評価金額とは直接関連しないことに留意する必要がある。ただし、簿価は各企業が一定のルールに基づき計上している金額であるため、評価上は簿価をベースにした検証を行う。したがって、借手企業が採用している簿価の計上方法についても確認することが必要である。

(4) 処分費用の見積り 実際に動産担保を処分する場合には、対象動産の確保、移動、保管などが必要になることから、あらかじめこれらに要する費用を見積もり、評価金額から控除しておくことも重要である。

◆改訂金融検査マニュアルとの関係

平成19年6月1日付の金融検査マニュアルの改訂により、動産担保について「一般担保」と認められるための「自己査定結果の正確性の検証」事項の一つとして、「客観性・合理性のある評価方法による評価が可能であり実際にもかかる評価を取得していること」があげられることとなっている。