IV巻 担保 編
40733  動産譲渡登記と占有改定型譲渡担保との優劣

同一の動産について、動産譲渡登記により対抗要件を具備された動産譲渡担保と、占有改定により対抗要件を具備された動産譲渡担保が競合する場合、その優劣は、いかに決せられるか

結論

動産譲渡登記と占有改定の時間的な先後によって決せられる。動産譲渡登記による動産譲渡担保が占有改定による動産譲渡担保に優先するわけではない。


解説
◆動産譲渡登記の効力

法人が動産を譲渡した場合において、動産譲渡登記がされたときは、その動産について、「民法178条の引渡しがあったものとみな」され(動産・債権譲渡特例法3条1項)、民法178条の引渡しがあったのと同一の効果を生ずる。すなわち、動産譲渡登記は、民法178条の引渡しと同等の効力を有するにとどまり、先行する占有改定に優先する効力はなく、後行する即時取得を一般的に排除する法制度的な効力もない。

◆民法178条の引渡し

民法178条は、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない」と定めている。同条は、同一の動産が二重に譲渡され、譲受人相互間で動産の所有権の帰属に争いが生じた場合、「引渡し」を先に備えた者が、自己の所有権の取得を他の譲受人(第三者)に対抗できるという原則を定めたものである(ただし、即時取得(民法192条)などの例外がある)。ここに「対抗する」とは、所有権の帰属を相争う関係にある第三者に対し、自己の所有権の帰属を主張できることをいい、「第三者」は、引渡しの欠缺(けんけつ)(引渡しがないこと)を主張するについて正当な利益または正当な法律上の利害関係を有する第三者(典型的には動産の二重譲受人、差押債権者、破産管財人など)を意味する。「引渡し」の方法には、「現実の引渡し」「簡易の引渡し」「占有改定」「指図による占有移転」の4種類がある。したがって、民法178条は、同一の動産が二重に譲渡された場合において、これらの引渡し方法のいずれかを先に備えた者が優先して所有権を取得することを意味している。

◆対抗問題の具体的帰結

以上より、同一の動産が法人によって二重に譲渡された場合の譲受人相互間の優劣は、動産譲渡登記または引渡しの先後によって決せられる(民法178条、動産・債権譲渡特例法3条1項)。

具体的には、動産譲渡登記が競合した場合の優劣は、登記の先後によって決せられる。動産譲渡登記と民法178条の引渡しが競合した場合の優劣は、登記がされた時と引渡しがされた時の先後によって決せられることになる。民法178条の引渡しが競合した場合の優劣は、引渡しの先後によって決せられる。いずれの場合も、譲渡行為の先後ではなく、対抗要件具備の先後によって決されることに注意を要する。また、後れて対抗要件を備えた者も、民法192条の要件を満たせば動産の所有権を即時取得し、その結果、先に対抗要件を備えた者が反射的に所有権を失う場合があることにも、注意を要する。