店頭商品を担保にとる場合に注意することは何か。また、管理上留意することは何か
店頭商品を担保にとる場合、質権設定が可能であるが、引渡しや継続的占有の面から不適当とされ、利用されることはきわめて少なく、占有改定の許される譲渡担保の形式によることが多い。商品の単価が高い場合(ダイヤ・絵画など)は、専門業者に評価させ、かつ、保管させる方法(第三者占有による担保取得)も検討すべきである。なお、店頭商品は販売により常時変動するため、集合物担保として設定されることが多い。
店頭商品はその保管を債務者に委ねる場合が多いため、無断で処分されるおそれがあり、また債務者倒産のとき、他の債権者や従業員により搬出処分されるおそれがあるため、明認方法の実施または直接占有などにより、即時取得の成立を防ぐように心がけなければならない。
店頭商品はその性格や管理上、担保として不適当な場合もあるので、その特性をふまえたうえで担保として徴求する。この場合、商品価値や管理、換価処分の難易性、火災保険付保の有無などを調査する必要がある。また、売主に所有権が留保されている場合、委託販売品の場合、あるいはすでに譲渡担保権が設定されたりしているような場合には、判例は占有改定による引渡しに即時取得の効力を認めないので、債権者が直接引渡しを受けていない限り即時取得は成立しないから、担保化は避けるべきである。
商品は動産であるから質権設定はもちろん可能であるが、引渡しや継続的占有などの面から、債務者から占有を移さなければならない質権の設定は不適当とされ、利用度はほとんどない(設定者の妻による代理占有を不可とする甲府簡判昭37.6.27(金法316号7頁)がある)。したがって、担保権としては、占有改定の方法により商品をそのまま担保化しうる譲渡担保形式による場合が多い。
商品を一括して集合物担保にとる場合については【40702】を参照されたい。
店頭商品に譲渡担保を設定している場合、商品は債務者が占有しているため、債権者に無断で売却または二重処分をされると、第三者が善意無過失のときは即時取得が成立し、思わぬ損失を被るおそれがあるので、目的商品にシールを貼りあるいはプレート等の公示札を掲げるなど、可能な限り明認方法を施しておくことが望ましい。もっとも、実務上は、店頭商品に明認方法を施すことは困難であることが多い。
また、債務者の倒産の場合には、他の債権者や従業員により商品が搬出処分されるケースが多いので、早急に引渡しを受け直接占有するか、即時取得の生じないよう梱包、明認のうえ隔離するなどの方法をとらなければならない。また、この場合、商品価値が急落しやすいので、処分時期を誤らぬよう心がけなければならない。担保商品に対する差押えの場合の措置については【40718】を参照されたい。商品の単価が高い場合(ダイヤ・絵画など)は、専門業者に評価させ、かつ保管させる方法(第三者占有による担保取得)も検討すべきである。