絵画・貴金属等を担保取得するにはどのような方法があるか
質権設定または譲渡担保権設定の方法をとるべきである。
債務者が、店頭においている商品を集合物として譲渡担保にとることも可能である。債務者が特定の倉庫に商品を入れているとか、倉庫業者に預けているとかいうケースであれば、店頭商品のように勝手に処分される可能性も小さいので、集合物として譲渡担保にとることも検討したほうがよい。構成部分の変動する集合物でも、その所在場所、種類、数量などを特定することによって、目的物が特定される場合は、一つの物として譲渡担保の目的とすることができる。金融機関が債務者との間で集合物を目的物とする譲渡担保契約を締結しておけば、債務者がその構成部分に属する物の占有を取得することによって、金融機関は当然にその物を担保にとったことになる。金融機関は、いったんその集合物を担保にとっておけば、その後、その構成物が変動しても、集合物としての同一性が認められる限り集合物全体に対する担保権を失うことはない(最判昭62.11.10民集41巻8号1559頁)。実務上は、「特定の店舗内の絵画・貴金属一切」とか「特定の倉庫内の商品一切」というように表示するほうが便利である。ただし、動産譲渡登記による対抗要件具備を行う場合には、動産の種類を明示することが必要とされている(動産・債権譲渡特例法7条2項5号、動産・債権譲渡登記規則8条1項2号イ)ことから、「特定の店舗内の動産一切」といった動産譲渡登記の申請は認められず、また、「特定の店舗内の絵画・貴金属一切」といった複数の動産の種類を併記することも認められないことに注意を要する。
集合物として、すべての商品を担保にとるのなら上記のように集合物担保として処理すればよいが、数点の特定の絵やダイヤを担保にする場合は、質権設定の方法により、目的物の現実の引渡しを受け、金融機関が継続占有すること(民法352条)も検討すべきである。また、譲渡担保権設定の方法による場合は、債務者に占有改定により代理占有させることもできるが、その場合、第三者に目的物を即時取得されかねない(同法192条)点に留意を要する。このリスクを軽減する方法として、目的物にプレートやシールを貼付する、もしくは動産譲渡登記(【40710】 【40711】参照)等、なんらかの明認・公示方法を施すことを対策として考えるべきである。なお、絵やダイヤなどの高価品は、その価格の鑑定と保管が困難であるから、極力、専門の業者に鑑定させ、かつ代理占有させるべきである。