IV巻 担保 編
40699  動産担保の管理手法と管理上の留意点

動産担保を適切に管理するうえで注意することは何か

結論

動産担保は、担保目的物が債務者側の管理下にあること、常に毀損・滅失のリスクにさらされていることと目的物が常時流動的であることに留意する必要があり、その前提のうえで事前調査やモニタリングを通じて定期的・継続的に管理していく必要がある。また、物流倉庫会社の在庫管理システム等も活用して、より確実な担保保全方法を選択する必要がある。


解説

動産担保の管理、特に集合動産の管理については、担保目的物が債務者側の管理下にあること、常に毀損・滅失のリスクにさらされていることと目的物が常時流動的であることに留意する必要がある。

基本的には、譲渡担保の性質上、譲渡担保設定契約のなかで、担保目的物に対する善良なる管理者としての注意義務(善管注意義務)や担保目的物の内容(担保明細)の定期的な報告義務、また、担保目的物を通常の営業の範囲内で利用する権利等を規定し、借手に一定の作為・不作為を義務づけることで、担保目的物の管理を図ることになる。それに加えて、債権者(貸手)としてどのような管理が必要となるか。まず、担保目的物の所在地および事前の存在確認と定期的な実査により、物理的に物を確認することである。そのうえで、モニタリングとして譲渡担保契約書の条項やコベナンツ条項への抵触の有無や定期的に報告される担保目的物の内容(在庫明細等)の確認により時系列管理を実施し、在庫内容の変化、在庫全体の回転期間や不良在庫の発生状況等をチェックする。さらに、定期的に外部評価機関による評価替えの実施により内容検証を行うことで、より確実性の高い担保管理を図るべきである。

なお、動産は常に毀損・滅失のリスクにさらされていることから、火災保険や動産総合保険といった万一のリスクに備えた保険を付している場合が多いので、担保管理の一環として保険金請求権に対し質権を設定しておくことも考えられる。

また、商品在庫などの動産を第三者の倉庫等に管理委託をする場合も多く、その場合には、物流倉庫会社の保有する「在庫管理システム」の活用を勧めたい。コストがかかるので規模は必要であるが、パソコンとインターネット環境があれば対応が可能であり、入荷から出庫までリアルタイムで在庫状況を把握できるメリットがある。一般的には債務者(借手)と倉庫会社間の寄託契約によって倉庫会社が動産を保管しているため倉庫会社は債務者(借手)からの委託に基づいた行動をとることになるが、事前に債権者(貸手)を含めた三者契約を締結し、債権者に対する在庫データの提供、担保目的物の変化に対する警鐘(アラート)や破綻時の占有確保等の条項を設定することにより、担保目的物の管理をより厳格にすることが可能となる。