IV巻 担保 編
40728  動産譲渡登記の記録事項と留意点

動産譲渡登記にはどのような事項が記録されるか。また、その留意点は何か

結論

譲渡人と譲受人の商号・本店等、登記原因およびその日付、動産の特定に関する事項、存続期間、登記年月日等が記録される。

譲渡動産の特定方法には「動産の特質」により特定する方法と「動産の所在」により特定する方法とがある。


解説
◆動産譲渡登記の記録事項

動産譲渡登記には主として以下の事項が記録される(動産・債権譲渡特例法7条2項、動産・債権譲渡登記規則16条1項等)。

① 譲渡人の商号または名称および本店または主たる事務所

② 譲受人の氏名および住所(法人にあっては、商号または名称および本店または主たる事務所)

③ 譲渡人または譲受人の本店または主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所または事務所

④ 動産譲渡登記の登記原因およびその日付

⑤ 譲渡に係る動産を特定するために必要な事項

⑥ 動産譲渡登記の存続期間

⑦ 登記番号

⑧ 登記の年月日

⑨ 登記の時刻

⑩ 登記の目的

◆動産の特定方法

動産の特定方法には、「動産の特質」により特定する方法と「動産の所在」により特定する方法とがある(動産・債権譲渡登記規則8条1項)。前者は個別動産、後者は集合動産の特定に向いている。

動産の特質により特定する場合には、①動産の種類、②動産の記号、番号その他の同種類の他の物と識別するために必要な特質を記録する。①は、動産の性質・形態など共通の点を有するものごとに分けたそれぞれの類型をいい、MRI装置、ノートパソコン、電気設備器具、プレス機、衣料品、貴金属類等がこれに当たる。動産の商品名や製品名は、動産の種類ではない。②は、製造番号、シリアルナンバーが典型である。また、これらがない動産については、ナンバリングしたシールを貼る等の明認方法を施し、当該明認方法を記録することでもよい。

動産の所在により特定する場合には、①動産の種類、②動産の保管場所の所在地を記録する。①については、流動する在庫商品を対象とする場合、不当な包括担保抑止の趣旨から、単に「在庫商品一切」とするだけでは特定として足りず、「普通棒鋼、異形棒鋼等の在庫商品」というように在庫商品の内容が例示され、ある程度の均質性が確保されていることが必要である。②については、原則として地番または住居表示の記録まで必要であり、「東京都千代田区」といった概括的な記録は認められない。

動産の特定については登記に「備考」欄が設けられており、特定を明確化するための有益事項を任意に記録することができる。たとえば、動産の特質により特定する方法では、動産のメーカー名やブランド名(○○社製平成○年式「○○」等)を記録することが考えられる。また、動産の所在により特定する方法では、保管場所の名称(○○社「第一流通センター」等)を記録することが考えられる。なお、保管場所が多数筆にわたる場合で、備考欄に保管場所の名称が記録されているときは、動産の保管場所の所在地にすべての地番を記録する必要はなく、保管場所が特定できる程度の筆数の記録があれば保管場所の特定がされていると解されている。

◆登記できない動産

自動車、船舶、航空機等、特別法により登記・登録が対抗要件となっている動産のうち、すでに当該特別法に基づく登記・登録がなされた動産の譲渡は登記できない(仮に登記されたとしてもその効力が認められない)。これに対し、未登録の自動車等(新車や登録が抹消ずみの自動車等)は登記することができる。

また、貨物引換証、預証券、質入証券、倉荷証券または船荷証券が作成されている動産の譲渡は登記できない(動産・債権譲渡特例法3条1項)。

◆変更登記はできない

動産譲渡登記には変更登記の制度がない。

よって、たとえば集合動産の保管場所が変更したり、保管場所の名称が変更したりしたとしても、これらの変更を既存の登記に反映させることができない。このため、ABL(【30273】参照)に際して動産譲渡登記を利用するときは、保管場所の変更等をレンダーの承諾事項とするなどの実務上の工夫を検討する必要がある。