動産譲渡登記を利用できるのはどのような者か。また、先行する動産譲渡登記の有無・内容はどのように検索すればよいか
動産譲渡登記は、譲渡人が法人である動産の譲渡について行うことができる。譲受人の属性については限定がない。
登記の証明書には、登記事項概要証明書、概要記録事項証明書および登記事項証明書の3種類がある。このうち、登記事項概要証明書と概要記録事項証明書はだれでも取得することができる。登記事項証明書は一定の利害関係人のみ取得することができる。
先行する登記の有無・内容は、登記事項概要証明書または概要記録事項証明書を取得することにより確認できる。先行する登記が確認できた場合には譲渡人等に登記事項証明書の提出を求め、さらに詳細を把握する。
動産譲渡登記制度は、法人がする動産の譲渡の対抗要件に関し民法の特例を設けるものである。よって、動産の譲渡人は法人であることを要する(動産・債権譲渡特例法3条1項)。およそ法人であればよく、株式会社のみならず、合同会社、医療法人、学校法人等も含まれる。外国法人であってもよい(この場合、日本における営業所または事務所が登記事項となる)。
これに対し、法人格を有しない組合や個人事業者を譲渡人とする動産譲渡は、登記を行うことができない。
他方、動産の譲受人には特に制限がなく、個人が譲受人となる登記も可能である(なお、組合については、組合自体を譲受人として登記をすることはできず、組合員全員を表示するか、または組合員からの受託者としての地位において業務執行者の一部を譲受人として表示する必要がある)。
登記の内容を記載した証明書には、登記事項概要証明書、概要記録事項証明書および登記事項証明書の3種類がある(【40730】参照)。
登記事項概要証明書と概要記録事項証明書には、譲渡に係る動産の内容に関する事項(動産・債権譲渡特例法7条2項5号)が含まれていないため、だれでも取得することができる。
これに対し、登記事項証明書は、譲渡された動産の内容に関する事項が含まれているところ、譲渡人がいかなる動産を所有し、譲渡しているかという情報は、譲渡人の営業秘密や事業戦略に関わるものといえるため、取得できる者が以下の利害関係人に限定されている(動産・債権譲渡特例法11条2項、動産・債権譲渡登記令15条)。
① 譲渡人または譲受人
② 動産の取得者、差押債権者、仮差押債権者
③ 動産の質権その他の担保権者
④ 動産の賃借人、使用借人等
⑤ 動産の管財人、保全管理人等
⑥ 譲渡人の使用人(従業員等)
先行する動産譲渡登記の調査は、まず、だれでも取得可能な、登記事項概要証明書または概要記録事項証明書を取得することにより行うことが適当である。
「登記事項概要証明書」は、指定法務局等(東京法務局。【40730】参照)において取得することができる。具体的には、指定法務局等において、動産の譲渡人の商号等を検索キーに指定して、登記事項概要証明書を取得することになる。この場合に検索可能であるのは、前日までに登記された動産譲渡登記である。また、動産譲渡登記ファイルは、法人登記と連動していないため、譲渡人の新商号等で検索を行った場合には、旧商号等のもとでなされた登記は検索結果に現れない。そこで、譲渡人が商号変更や本店所在地の変更をしている場合には、別途、旧商号または旧本店所在地を検索キーにした検索も行う必要がある。
検索の結果、動産譲渡登記ファイルに該当する記録がなければ、その旨の証明書(いわゆる「ないこと証明書」)を取得することで、当該譲渡人が譲渡した動産の登記が存しないことの確認ができる。
これに対し、該当する記録がある場合であって、追加の情報を得たいときには、さらにその内容を確認するため、譲渡人等の利害関係人に対し、登記事項証明書の取得を要請することが考えられる(なお「譲渡人に融資しようとする者」は、登記事項証明書を取得できる利害関係人には含まれない)。
登記事項概要証明書の取得にかえて概要記録事項証明書を取得する検索方法も考えられる。両者の違いは【40730】のとおりであり、いずれを用いるかは両証明書の特性をふまえて判断すればよい。