I巻 コンプライアンス・取引の相手方・預金・金融商品 編
10011  リーガル・チェック等

リーガル・チェック等とは何か。実施にあたって留意すべき点は何か

結論

リーガル・チェック等とは、コンプライアンス・チェックを含み、たとえば、法務担当者、法務担当部署、コンプライアンス担当者、コンプライアンス統括部門または社内外の弁護士等の専門家により内部規程等の一貫性・整合性や、取引および業務の適法性について法的側面から検証することをいう。

実施にあたっては、リーガル・チェック等の対象、実施部署や責任の所在、リーガル・チェック等に関する手順等を明確に定め、社内に周知徹底する必要がある。

リーガル・チェック等態勢については、金融検査マニュアル法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストにあげられている項目である(金融検査マニュアル法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストⅢ「個別の問題点」5)。


解説
◆リーガル・チェック等とは

リーガル・チェック等は、一般的には企業の業務や個々の取引の内容、または契約書等についてその適法性を法的側面から検証すること、および訴訟等の紛争リスクを検証することを指す。

しかし、単に適法性や紛争リスクの検証にとどまらず、金融機関内のルールや社会的規範に照らした妥当性の検証が重要となってきており、最近ではこのコンプライアンス・チェックを含めてリーガル・チェック等という場合が多くなってきている。

このため、金融検査マニュアルでは、「内部規程等の一貫性・整合性」について法的側面から検証することも含めて、上記〔結論〕で述べた内容を「リーガル・チェック等」と定義している。

従来のリーガル・チェックよりも広範な視点からのチェックが求められている点に注意する必要がある。

◆リーガル・チェック等管理態勢

企業活動におけるコンプライアンスの重要性はあらためていうまでもないことであるが、コンプライアンスを確保するためにも、コンプライアンス・チェックを含めたリーガル・チェック等が適切に行われることがきわめて重要である。

そのためには、リーガル・チェック等の対象、実施部署や責任の所在、リーガル・チェック等に関する手順等を明確に定め、行内で周知徹底を図る必要がある。

◆リーガル・チェック等の対象

どのような場合にリーガル・チェック等を行う必要があるかは、金融機関の実情に応じて各々が定める事項であるが、以下の場合にはリーガル・チェック等が必要となる。

① 新規業務の開始や新商品を取り扱う場合における、業務・商品の内容・仕組みや契約書等の一定の文書

② 既存の業務や商品の内容を変更する場合において、変更内容が業務・商品の法的な位置づけ等に影響を及ぼしたり、自行の紛争リスクに影響を与えたりする可能性がある場合等における、業務・商品の内容・仕組みや契約書等の一定の文書

③ 個別の取引に関し、自行で定めた一定の条件や範囲に該当する場合における、契約書等の文書

④ 法務・コンプライアンス等に関連する内部規程等の社内規則の制定・改定

以上のほか、金融検査マニュアルでは、リーガル・チェック等が必要な場合として、「海外の本・支店や現地法人等における顧客口座の開設等の取次その他の取引等」「優越的地位の濫用等が懸念される取引等」「増資におけるコンプライアンス等」「複雑なスキームの取引の適法性」「利益相反のおそれについての検討が必要な事案」「いわゆるプライベート・バンキング等における非定形取引等」「アームズ・レングス・ルールの適用のあるグループ内取引の適法性」「コルレス契約の締結」「法令上求められるディスクロージャー等」「その他法的リスクが高いと合理的・客観的に判断される文書、取引、業務等」が例示的に列挙されている。金融機関としては、これらを参考として各行(庫・組)の実情をふまえて、リーガル・チェック等の対象範囲を検討し、決定のうえルール化する必要がある。

◆リーガル・チェック等の実施体制

金融検査マニュアルでは、リーガル・チェック等の実施主体については、法務担当者、法務担当部署、コンプライアンス担当者、コンプライアンス統括部門または社内外の弁護士等の専門家を例示している。

リーガル・チェック等を実施するにあたっては、前述のとおりリーガル・チェック等の対象範囲を定めて、その対象に応じて、実施者、実施基準、実施手順等を具体的に定める必要がある。

また、金融検査マニュアルでは、外部の弁護士等の専門家によるリーガル・チェック等を経た場合でも、取引等の実行前に当該専門家の意見の内容を十分吟味・検討を行う必要がある旨記載されているので、この点にも留意する必要がある。