IV巻 担保 編
40731  資格者代理人(司法書士等)の活用

動産譲渡登記を行うにあたり、資格者代理人を活用する利点は何か

結論

資格者代理人を活用することにより、登記の申請手続や申請内容についての過誤を未然に防止することができ、結果的に迅速な登記に資することが期待できる。


解説
◆登記申請の要式性

動産譲渡登記の申請は、指定法務局等に出頭して行う方法、郵送によって行う方法、オンライン申請によって行う方法がある。オンライン申請は、電子証明書の取得など譲渡人・譲受人に一定の登記インフラが整っていることが必要であるため、申請の多くは出頭または郵送によって行われているのが現状である。

出頭または郵送により動産譲渡登記を行う場合には、登記申請書のほか、申請データを記録した磁気ディスク等(フロッピーディスク、MOまたはCD-R)を提出する必要がある。申請データは、法務省の告示により詳細に定められた所定の記録方式に従い、XMLデータとして正確に作成する必要がある。XMLデータは市販のパソコンソフト等を用いて作成することになる。

このように、動産譲渡登記では厳格な要式性が要求されており、しかも申請データに記録された内容がそのまま動産譲渡登記ファイルに記録・公示される仕組みとなっている。

そして、動産譲渡登記は、申請順に従い迅速に登記を行うべき要請が強いため、不動産登記や商業登記と異なり補正が認められていない。そこで、記録事項に誤りがあると取下げを余儀なくされることとなる。その結果、再申請を行うまでの間、動産譲渡の対抗要件の具備時点が遅れることになる。実務上は、譲渡人・譲受人の商号・本店所在地と資格証明書との不一致(所在地の「字」が抜けているケースなど)、任意記載事項である会社法人番号の誤記載、データ保存の際のファイル名の誤り等の例がみられると指摘されている。

また、首尾よく登記できたとしても、記録内容に不備があるため、事後的に登記の効力が否定されるリスクもある。登記に不備がある場合、動産譲渡の対抗要件具備の効力そのものが失われることになるため、譲受人としては大きな影響を被ることになる。たとえば、動産譲渡担保に際して動産譲渡登記を利用する場合、登記の効力が否定されると、譲渡担保権の取得についての対抗要件具備がなされていないことになり、第三者に対して自己の譲渡担保権を対抗できない結果、被担保債権が無担保債権と同様となり、債権の保全ができないことになりかねない。

この点、債権譲渡登記のケースでは、①譲渡対象債権の発生日が複数日に及ぶにもかかわらず債権の発生年月日として始期のみが記録された債権譲渡登記について、始期当日以外の日に発生した債権の譲渡の対抗力が否定された例(最判平14.10.10民集56巻8号1742頁)、②「債権の種類コード」の選択において「その他報酬債権」とすべきところ、誤って「売掛債権」と記録した登記の対抗力が否定された例(東京高判平13.11.13金法1634号66頁)、③譲渡対象債権の原債権者と債務者とを誤って反対に記録した債権譲渡登記の対抗力が否定された例(東京高判平18.6.28金法1783号44頁)などが現れている。動産譲渡登記についても、登記の過誤により動産譲渡の対抗力が否定されるケースが今後出てくるものと思われる。

◆資格者代理人の活用

上記のような登記の過誤を防止するためには、経験に長けた資格者代理人(司法書士等)の活用が有益である。資格者代理人を活用することにより、登記の申請手続や申請内容についての過誤を未然に防止することができ、結果的に迅速な登記に資することが期待できる。

もっとも、現段階では、動産譲渡登記の事例はなお蓄積途上であり、全国の資格者代理人があまねく動産譲渡登記申請を手がけているとまではいえない。そこで、資格者代理人の取扱業務分野にも留意して委嘱を行うことが必要といえる。