コンプライアンス態勢の管理・運営にあたっての留意点は何か
コンプライアンス態勢の管理・運営にあたっては、コンプライアンスの実践計画(狭義のコンプライアンス・プログラム)の策定・実施、評価・改善に向けた取組み、内部統制システムに基づくモニタリング態勢整備がポイントとなる。
また、経営陣がこれらの状況を分析・評価し、改善に向けた指示・進捗状況のフォローアップを図る態勢も必要である。
コンプライアンス態勢の管理・運営にあたっては、コンプライアンスに関する情報を一元的に管理するための統括部署(コンプライアンス統括部署)の設置が不可欠である。
コンプライアンス統括部署によるコンプライアンス情報の一元管理のためには、内部統制システムや相談・報告システム等の構築が前提となる。(相談窓口については【10006】参照)。
コンプライアンス態勢の管理・運営にあたっては、コンプライアンスの実践計画(狭義のコンプライアンス・プログラム)に基づく施策への取組みが基本となる。(狭義のコンプライアンス・プログラムについては【10004】参照)。
この取組みにあたっては、具体的な施策の企画・立案(P)、実践(D)、施策の進捗状況と効果のチェック・検証(C)、検証結果に基づく改善への取組み(A)という、いわゆる「PDCAサイクル」が有効に機能することが重要である。改善への取組みが次の施策につながることにより、コンプライアンス態勢はより強化されていくことになる。
コンプライアンス統括部署は、取締役会の承認を受けて(狭義の)コンプライアンス・プログラムを策定し、その進捗状況や達成状況のフォローアップを管理し、経営陣に報告する必要がある。また、その内容を定期的に見直すほか、計画期間中に対応を要する事態が生ずれば適宜追加見直しを行う等、状況に応じた運営にも留意する必要がある。
コンプライアンス統括部署は(狭義の)コンプライアンス・プログラムの管理のほか、内部統制システムや相談・報告システムに基づき、各業務部署や営業店等の日常業務における法令等遵守の状況のモニタリングを行う必要がある。
モニタリングにおいて、事案によってはコンプライアンス担当者から追加報告や継続的な報告を求めたり、実地調査を行ったりすることも必要となる。また、問題点や改善を要する事項があれば、その原因を分析・検討のうえ、関係部署に対し、未然防止または再発防止を含む是正・改善に向けた具体的な指示や施策の策定等を指導することが重要である。
なお、顧客からの相談・苦情等については顧客サポート等管理責任者等と連携し、法令等違反行為またはその疑いに関する情報が含まれるものについてはコンプライアンス統括部署に報告させたうえ、コンプライアンス統括部署はそれを分析・検討のうえ還元するほか、相談・苦情等のなかで、必要と判断する事案については、利害関係のない者による適切かつ十分な調査を行わせ、原因究明を図る態勢の整備が必要とされている点にも留意する(モニタリングの結果、法令等違反行為があった場合の対処については、【10010】参照)。
コンプライアンス態勢の管理・運営状況については、定期的にまたは必要に応じて適宜経営陣へ報告する必要がある。
報告を受けた経営陣は、これらの状況を分析・評価し、法令等遵守態勢の実効性の評価を行ったうえで、態勢上の弱点、問題点等改善すべき点の有無やその内容・原因を検討・検証し、改善に向けた指示を行う必要がある。改善計画等についてはその進捗状況を検証し、適時・適切にフォローアップを図る態勢も必要である。