I巻 コンプライアンス・取引の相手方・預金・金融商品 編
10010  法令等違反行為への対応と留意点

法令等違反行為が判明した場合にどのように対応すべきか。その際の留意点は何か

結論

法令等違反行為が判明した場合、直ちにコンプライアンス統括部署の管理者等にその事実が報告され、コンプライアンス統括部署は関連する部署等と連携して違反行為を停止、是正させるとともに、経営陣にも必要に応じ速やかに報告する。

さらに、コンプライアンス統括部署は違反行為の背景、原因、影響等を調査・解明し、責任の明確化を図るとともに、調査結果に基づく再発防止策を速やかに講じ、社内に周知徹底させる必要がある。

なお、法令等で求められる当局等への届出や適時開示の要否についての検討を要することにも留意する。

法令等違反行為への対応については、金融検査マニュアル法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストにあげられている項目である(金融検査マニュアル法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストⅢ「個別の問題点」4)。


解説
◆コンプライアンスに関する情報の一元管理

法令等違反行為に適切な対応を行うためには、コンプライアンス統括部署がコンプライアンスに関する情報を金融機関のさまざまな部署から吸い上げる態勢を整備し、法令等違反の疑いがある行為が判明した時点で早期に対応する必要がある。そのためには、内部統制システムや相談・報告システムの構築が不可欠である。

◆法令等違反の疑いがある行為の調査

法令等違反の疑いがある行為が判明した場合には、コンプライアンス統括部署は、直ちに、当該事案について自ら調査し、または、当該事案と利害関係のない部署に調査させたうえで、法令等違反行為の有無やコンプライアンス上の問題点の有無について検証する必要がある。

◆違反行為の停止・是正と原因分析、再発防止策の策定

調査、検証の結果、法令等違反行為があったことが判明した場合には、コンプライアンス統括部署は直ちに関係する部署と連携し、違反行為の停止、是正の措置を講ずる必要がある。

また、法令等違反行為の行為者およびその管理責任者等に対しては、責任の明確化や追及を適切に行う必要がある。

一方、法令等違反行為について、その背景、原因、影響の範囲等について、コンプライアンス統括部署が自ら調査した、または利害関係のない部署に調査させた結果を分析し、その結果を管理者に報告する必要がある。

なお、原因分析にあたっては、事象の表象的な面にとどまらず、その背景や影響範囲も検証する必要がある。特に、個別の事象としては法令等の違反の程度が軽微なものであっても、同様の違反行為が頻発しているような場合には、組織の構造的な面に問題がないか等を検証する必要がある。

この分析結果については、再発防止の観点から関連業務部署の管理者や営業店長等に還元し、将来の未然防止のための措置を速やかに講ずるとともに、関連する他の部署にも講じさせる必要がある。

なお、法令等違反行為等のマイナスの情報は速やかに経営陣に報告されるような態勢を構築し、再発防止策の策定、実行に関して経営が率先して関与することで再発防止策の実効性が高められる点にも留意する。

このほか、賞罰・人事考課の評価項目上、法令等遵守が十分考慮する必要があり、たとえば、表彰制度について、法令等遵守の観点から問題のあった営業店等および職員等については表彰の対象から除外することなどが考えられる。

◆当局等への届出や適時開示の要否の検討

法令等違反行為が判明した場合には、法令上求められる不祥事件や事故等の届出の要否、疑わしい取引の届出の要否、適時開示の要否等を検討する必要がある。これらの届出等は法令等で期限が定められている場合もあるので、違反行為が判明した場合には速やかに要否を検討する。「不祥事件」にかかる届出については、【10337】を参照されたい。

また、法令等で適時開示の義務が課せられていない場合でも、重大な法令違反であった場合や違反行為が与える社会的影響が大きい場合においては、当該事実を公表すべきかどうかも検討する必要がある。公表しなかったり公表が遅延したりしたことにより、社会的な批判を受ける可能性もあることに留意する。