IV巻 担保 編
40704  倉庫内の商品を担保とする方法

倉庫内の商品を担保とするにはどのような方法があるか

結論

質権と譲渡担保権のいずれの設定もが可能であるが、占有改定の許される譲渡担保権を設定することが多い。この場合、商品の数が多くかつ単価も低いときには、倉庫内の商品を一括して集合物担保として設定することもできる。質権の場合には、出保管または代理保管制度がとられることが多い。

なお、倉荷証券が発行されているときは倉荷証券を担保に徴求する。この場合も質権、譲渡担保権のいずれを設定してもよいが、一部出庫の必要のあるときは質権のほうが便利である。


解説
◆倉荷証券のある場合

倉庫業者は預け主の請求により倉荷証券を発行することになっている(商法627条1項)が、この場合、商品は証券に化体しているので、倉荷証券を担保として有価証券担保の形式で徴求することになる。倉荷証券を発行しうる業者は信用力もあり管理も十分であると考えられ(倉庫業法13条2項各号参照)、倉庫内商品の担保価値が毀損されるリスクを抑えられる。可能な限り、このような業者から倉荷証券による担保徴求を行うことが望ましい。なお、一部出庫手続を要する場合は質権形式が適している。詳しくは【40708】を参照されたい。

◆倉荷証券のない場合

(1) 質権設定の場合 在庫商品を目的とする担保権として、まず質権を設定することが考えられるが、質権の場合には、効力発生要件としての目的物の引渡し(民法344条)と対抗要件としての継続的占有(同法352条)が必要となる。継続的占有として、設定者以外の者による代理占有が認められているので、占有と保管を倉庫業者にあたらせ、「指図による占有移転」の方法により引渡しを了し、以後、業者に代理占有させることは可能であり、質権は成立しうる。この場合、商品を格納する倉庫として、業者の倉庫を利用する場合と、債務者の倉庫を利用する場合とがある。前者を代理保管といい、後者を出保管という(【40709】参照)。一般に出保管のほうが債務者の倉庫を利用するため、代理保管に比し利用が多い。両者とも倉庫業者の保管能力を利用した効率的な担保管理である。

そのほか、債権者が商品の格納された債務者の倉庫を直接借り受け、保管する方法もあるが、立会いその他の理由から利用は少ない。

(2) 譲渡担保権設定の場合 在庫商品を目的とする担保権として譲渡担保権を設定する場合も、動産譲渡の対抗要件である引渡し(民法178条)が必要となる。もっとも、この引渡しについては、占有改定による方法が認められているため、質権の場合と異なり目的物を債務者の手元にとどめておくことが可能であり、質権よりも利用される例が多い。しかしその半面、債務者により無断処分をされたときには、即時取得により担保権を失うおそれがある。

なお、譲渡担保の場合、個別担保として利用されるほか、商品の数が多く、かつその単価が低いときなどには、管理手続の合理化を図って、倉庫内の商品を一括して集合物とし、いわゆる集合物担保とすることが多い(【40702】参照)。