I巻 コンプライアンス・取引の相手方・預金・金融商品 編
10003  コンプライアンス管理組織

コンプライアンス統括部署や、コンプライアンス担当者などコンプライアンス管理のための組織づくりにあたって留意すべき点は何か

結論

コンプライアンス管理の組織は、法令等遵守方針、コンプライアンス・マニュアルなどで策定された行動規範を実践するための組織であり、コンプライアンス統括部署においてコンプライアンス関連情報を一元的に管理する体制を構築するとともに、各部署に配置したコンプライアンス担当者と連携させ、法令等違反事案に適切に対応できる体制、法令等違反行為の未然防止および法令等遵守態勢の改善に役立てるような態勢を整備する必要がある。


解説
◆コンプライアンス管理組織を設ける目的

金融機関職員によるコンプライアンスの欠如が金融機関および金融システムにもたらす損害・損失ならびに社会的影響は近年ますます大きくなってきている。そのため、金融機関は、法令等遵守を確保(=法令等に違反することを予防)する態勢を整備する責務を負っている。

法令等違反予防の実をあげるには、業務部署や営業店等に遵守すべき法令や社内規則を特定させ、業務の内容や職責に応じた研修をさせるとともに、コンプライアンス統括部署において各部署に散在する法令等遵守に関する情報(コンプライアンス関連情報)を一元的に収集、管理、分析、検討して、法令等違反行為の未然防止、再発防止を含む法令等遵守態勢の改善に役立てることができるような態勢の整備が求められている。このことは、金融検査マニュアル法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストにおいて、「コンプライアンス統括部門の態勢整備」があげられていることからも明らかである。

◆コンプライアンス管理組織の態勢整備の留意点

コンプライアンス管理のための組織の態勢整備にあたっては、以下の点に留意する必要がある。

① 役職員のなかから部署ごとなどにコンプライアンス担当者を選定し、その担当する職務の権限を明確にすること。

② コンプライアンス担当者の職務遂行に関するレポーティング、指導・監督権限を明確にすること。

③ 金融機関のさまざまな部署に散在するコンプライアンス関連情報を一元的に管理するコンプライアンス統括部署を設置すること。さらに、この統括部署を事務局として、社内においてしかるべき地位を占める役員(コンプライアンス担当役員)や役員等で構成される委員会(コンプライアンス委員会)を設けることも考えられる。また、この統括部署は、営業推進部署等から独立性を確保し、牽制機能を果たすことが求められていることから、それを可能とする組織を整備する必要がある。

④ 役職員からのコンプライアンスに関する問合せ、通報、相談等を受けて適切に処理する相談窓口を設置すること(【10006】参照)。

⑤ 法令等違反事案に対する制裁、処分、罰則を明示すること、それを実行すること、および違反事案の原因分析を行い再発防止策を策定すること。

⑥ 明白なコンプライアンスの違反がない場合であっても、コンプライアンス経営の実践状況に関する評価を行うことおよびその評価方法を整備すること。

◆コンプライアンス管理組織の周知

法令等遵守を確保するという本来の目的を達するためには、コンプライアンス・マニュアルなどの企業行動規範のみならず、コンプライアンス管理組織の存在と相談窓口等の利用方法を役職員に広く周知する必要がある。