IV巻 担保 編
40710  機械・器具の担保取得方法

機械・器具を担保取得するにはどのような方法があるか

結論

機械・器具を担保にとる方法としては、①質権設定、②譲渡担保、③工場抵当法2条による抵当権設定、④同法11条により機械・器具を工場財団の組成物件として工場財団に抵当権を設定する方法がある。大きなメーカーの場合は④の方法によることが多いが、中小メーカーの場合は②か③の方法をとるケースが多い。


解説

(1) 質権設定の場合、金融機関がその物を占有できる場合は問題ないが(民法344条)、金融機関が占有改定(同法183条)の方法により質権設定者に質物の代理占有をさせることは認められていない(同法345条)ため、実務上、この方法をとるケースは少ない。

(2) 町工場など一つの工場の機械・器具のみを担保にとる場合は、譲渡担保の方法によるべきである。この場合は、譲渡担保権を設定し、占有改定により譲渡担保権設定者に機械・器具の代理占有をさせるのである。この場合、機械・器具にはたとえば「○○銀行担保」等という表示をすべきである。しかし、実務上は、このような表示をするのには抵抗もあるし、表示をはがすこともできるので、第三者に運び出され、即時取得される可能性はある(同法192条)。

また、法人の動産の譲渡については、占有改定による対抗要件に加え動産・債権譲渡特例法により、登記による対抗要件の取得(同法3条)が可能となっているが、動産の取得者が当該登記の設定の確認をしないことが直ちに即時取得の要件の一つである取得者の無過失を否定するかどうかは、今後の個別具体的な判断に委ねられる(【40711】参照)。

(3) 工場抵当法2条による抵当権設定は、金融機関が工場の土地・建物と一緒に、そこに備え付けられた機械・器具を担保にとるのに便利なものである。ただし、第三者の所有物には担保権が及ばないので、その物については、前記(2)の方法をとるべきである。この場合、実務上は、いわゆる「3条目録」という機械・器具の目録を提出して、土地・建物に対する抵当権設定登記をするのである(工場抵当法2条・3条)。土地・建物に対する抵当権の順位と機械・器具に対する抵当権の順位は、目録の提出の順位に関係なく、土地・建物に対する抵当権の順位で決まるかという問題については、これを肯定し、目録の提出・記載は単に公示としての効力しかないとする福岡高判平3.8.8(金法1312号26頁)が出たが、最高裁は従来の判例・登記実務と同様に、目録の提出・記載は対抗要件であると判示し、これを否定した(最判平6.7.14民集48巻5号1126頁)。したがって、必ず同時に目録を提出することが必要である。

(4) 大メーカーなどの場合は、工場財団を組成し、工場の土地・建物、機械・器具だけでなく、特許権や借地権なども組み込み、この財団を一つの物として抵当権を設定することができる(工場抵当法8条以下)。