IV巻 担保 編
40698  動産担保の対抗要件

動産担保の対抗要件具備の方法とは何か

結論

民法における動産の譲渡担保の対抗要件は、「引渡し」であるが、動産・債権譲渡特例法の施行により、動産譲渡(担保)の「登記」がされたときは、その動産について、民法178条の引渡しがあったものとみなされる(動産・債権譲渡特例法3条1項)として、「登記」に「引渡し」と同様の効果、すなわち対抗要件の具備を認めたものである。


解説

動産・債権譲渡特例法が施行されるまで、譲渡担保権の設定の対抗要件は「引渡し」(民法178条)とされていた。「引渡し」とは占有移転であり、物の所持を現実に移転する現実の引渡し(同法182条1項)のほかに、外形上変更のない三つの引渡し方法が規定されている。すなわち、①簡易の引渡し(同法182条2項)、②占有改定(同法183条)、③指図による引渡し(同法184条)である。①は、当事者間の占有移転の合意のみであり、②も当事者間の占有移転合意と意思表示で、③の場合は、当事者間に占有代理人が介在し、当事者間の占有移転を占有代理人に対する指図と占有代理人の承諾により成立するものである。ただし、第三者に対する公示力がないため、二重譲渡等のリスクは排除できず、実務的には契約書上に確定日付を付することにより、第三者に対抗することとなる。

そこで、譲渡担保の仕組みをより簡易に、より安全に活用できるようにするため、動産・債権譲渡特例法が施行されることとなった。これにより、動産の譲渡(担保)が「登記」できるようになり、この「登記」に民法上の「引渡し」と同様の効果、動産譲渡(担保)の「登記」がされたときは、その動産について、民法178条の引渡しがあったものとみなされる(動産・債権譲渡特例法3条1項)、すなわち、対抗要件の具備を認めることとなり、公示性が高まったことで譲渡担保のリスクに対する安全性が増し、経済活動においても活用しやすくなることになる。