IV巻 担保 編
40713  製造中・委託加工中の商品の担保取得方法

製造中または委託加工中の商品を担保にとるにはどうすればよいか

結論

① 製造中の商品については、原材料から製品に至るいっさいの物件を担保とする集合物担保方式による場合と、原材料の所有権を個別に債権者に移転させ、債務者に委託加工ならびに販売させる場合とがある。

② 委託加工中の商品については、下請企業に対し指図による占有の移転を行い、譲渡担保とする例が多い。実務上は、集合物担保の有効性も認められているので、集合物担保の方法によるべきである。


解説

製造中の原材料その他の商品は変動が激しく、換価、回収にも難点があるので、担保としてはあまり適していないが、ほかに方法のないときには、副担保として設定を迫られる場合も生ずる。

◆製造中の商品を担保にとる場合

製造中の原材料その他の商品は、製造から販売までを、工場その他債務者の占有のなかにとどめなければならないため、目的物の引渡し、占有の継続を必要とする質権には適さず、占有改定の方法による引渡しの認められる譲渡担保として徴求するのが通常である。

(1) 集合物担保形式 目的物が常時加工され、売却されるような変動性の激しい場合には、工場において加工され製品に仕上がるまでの過程のいっさいの物件に対し、一括して集合物担保を設定することができる。集合物担保については【40702】を参照されたい。

(2) 委託加工、販売形式 上記のほか、原材料などの製造に必要な物件の所有権を個別に債権者に譲渡させ、これを債務者に委託加工させて、製品を販売させる方法により担保をとることができる。この場合の対抗要件である引渡し(民法178条)については、債務者に委託加工させるため、占有改定の方法によることなる。

この場合には、原材料の譲渡担保権設定契約、委託加工契約、製品の委託販売契約がなされることとなる。なお、担保権設定契約には公正証書または確定日付の徴求・動産登記(【40718】参照)等により、国税に対し設定日を証明しておくことはいうまでもない。

◆委託加工品を担保にとる場合

債務者が下請企業に委託加工を発注した場合でも、原料支給の発注があれば、委託加工のまま担保にとることができる。

委託加工品を担保にとる場合の物件の引渡し(民法178条)は、指図による占有移転の方法がとられるので、質権および譲渡担保のいずれを設定することもできるが、一般的には譲渡担保方式でなされることが多い。この場合、後日の紛争を避けるため、下請企業から、指図による占有の移転のあったこと、以後債権者のために占有すること、物件を債務者に引き渡さないこと等を明記した依頼書兼承諾書を徴しておく必要がある。また、同法246条によれば、加工物の所有権は材料の所有者に帰属するが、価格の増加が著しいときは加工者に帰属する場合もあるので、委託加工にあたっては、価格の増加度合いにかかわらず物件の所有権が債務者に帰属する旨もあわせて明記しておかなければならない。さらに、付合、混和についても特約の必要がある。なお、下請企業の処分を防ぐため、可能な限り明認方法をとっておくとともに、損害担保契約をしておくのも一方法である。

なお、占有者が第三者(代理人)である場合にもその承諾を得ずに動産譲渡登記を設定することが可能となっている(【40702】参照)。また、譲受人(譲渡担保権者)として登記されている者が第三者(代理人)に対して動産引渡しを請求した場合について、第三者(代理人)の保護規定が設けられている(動産・債権譲渡特例法3条2項)。