きんざい Online

スマートフォン、PCで、『週刊金融財政事情』の記事が読み放題(月額会員1,320円/月)になりました。記事単位での購入も可能です。※「週刊金融財政事情」は1950年に創刊された、金融界と歩みをともにしてきた日本で唯一の金融専門誌です。

2018.09.19.

銀行第一課長が財務官への登竜門!?

今年は7月17日に幹部の定例人事異動を行った金融庁。3年間続投した森信親長官が退任し、新長官に遠藤俊英監督局長が昇格した。監督局長には、遠藤氏の右腕だった栗田照久参事官(監督局担当)が抜てきされた。主要行を監督する銀行第一課長には、柳瀬護財務省大臣官房参事官が就任。柳瀬氏は財務省の「国際畑エース」との呼び声が高かった人物で、財務省から銀行第一課長に直接就任する人事は前例がない。今回のキャリアパスには「ロールモデル」がありそうだ。

監督局銀行第一課長とは

 金融庁において、監督局銀行第一課長といえば、メガバンクを含めた主要行等の監督に加えて、新設銀行や外国銀行支店の免許付与などを担う重要な役職だ。人事的に見ても、遠藤俊英長官(1982年旧大蔵省入省、銀行第一課長の在籍事務年度期間2005~06年、以下同じ)、氷見野良三金融国際審議官(83年、07~08年)、森田宗男証券取引等監視委員会事務局長(85年、09~11年)、栗田照久監督局長(87年、13年)といった現在の最高幹部たちが、この枢要ポストの椅子に座ってきた。 遠藤長官の銀行第一課長時代には、優越的地位を濫用した三井住友銀行の「金利スワップ販売問題」がさく裂。金融庁は、半年間の金利系デリバティブ商品の販売勧誘停止という、極めて重い行政処分を同行に科した。今夏の定例人事異動で「サプライズ」として注目を浴びた栗田監督局長の銀行第一課長時代には、みずほ銀行の反社会的勢力に対する不適切融資が世間を騒がせた。同行が、信販会社との提携ローン(キャプティブローン)において反社会的勢力に融資していたことを把握していながら、それを放置していたことが問題となり、金融庁は提携ローンの新規取引停止を含む行政処分を発出した。
 金融庁発足以降、いつの時代も銀行第一課は金融史に残る事案に向き合い、金融システムの安定という重責を担ってきた。そのセクションを取り仕切る銀行第一課長には手堅さと実行力を持ち合わせた行政手腕が求められ、その後も金融庁の重要ポストを歴任していくのは当然の流れといえる。
 ところが最近、この銀行第一課長を巡る人事上の位置付けに、ある傾向が見られるようになっている。

財務省の国際畑エースが銀行第一課長に就くルート

 それは、財務省の国際畑エースが就くケースが出てきていることだ。有泉秀氏(88年、12年)や三村淳氏(89年、14年)がそれに当たる。現在、金融庁の参事官(国際担当)を務める有泉氏の前職は、財務省国際局総務課長。かたや三村氏は銀行第一課長の後、財務省国際局開発政策課長、同省大臣官房文書課長を経て、今年7月に副財務官に就任した。
 そして今年7月の人事で銀行第一課長に就任したのが、柳瀬護氏である。92年旧大蔵省入省。中堅時代は、銀行第二課総括課長補佐、人事企画室長、監督企画室長、健全性基準室長兼国際監督室長など金融庁勤務が長く、その後、IMF(国際通貨基金)日本理事室審議役、財務省国際局為替市場課長を経て、同省大臣官房参事官を歴任した経歴の持ち主である。前職の大臣官房参事官のときには、今年4月に行われた財務省セクハラ問題の野党合同ヒアリングに駆り出されていたことも記憶に新しい。テレビ報道で政治家に詰問される柳瀬氏の映像が繰り返し流されたことで、「財務省きっての二枚目キャラ」(財務省幹部)として世間の注目を集めた。
 有泉氏、三村氏、柳瀬氏に共通するのが、為替市場課長の経験者であることだ。為替市場課は日本の為替相場政策を率いており、その手段である為替介入は財務官―国際局長―為替市場課長のラインで決定されるといわれている。為替市場課長は、言わば為替介入の「現場指揮官」である。それだけに、財務省の次官級ポストである財務官への登竜門とされてきた。
 その財務省の国際畑エースが、なぜ銀行第一課長に就くのか。もちろん、G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の一角としてグローバルに活動するメガバンクが監督対象であるならば、その必要スキルとして相応の国際対応力が求められることも背景にあるだろう。それに加えて、財務省の「人材育成」という意味合いも濃い。つまり、銀行第一課長が為替市場課長と同様、「財務官への登竜門になりつつある」(財務省幹部)という見方だ。
 財務官といえば、主要国の国際金融担当の事務方トップで構成されるインナーサークル「通貨マフィア」の一員で、黒田東彦日本銀行総裁も財務官経験者だ。黒田氏もそうだが、財務官退官後も、アジア開発銀行総裁やIMF副専務理事など日本代表として国際機関の要職をキープする役目を持つ。国際金融の舞台で中国の台頭が著しいなか、財務省国際局は一層、人材供給力の質を維持していかなければならない。通貨マフィアとして他国と丁々発止わたり合うためには、「メガバンク幹部らとも気心の知れた間柄になっているなど人脈力がモノを言う」(財務省OB)。日々、主要行の首脳や幹部らとコミュニケーションを取る銀行第一課長は、その人脈づくりにうってつけというわけだ。

金融庁の国際畑人材の育成も課題

この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2018年9月17日号(3277号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから