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2018.09.24.

再編期待で一段の上昇が予期される地銀の外国人株主比率

プロスペクト・アセットは、東京・千駄ヶ谷にある不動産会社プロスペクトが親会社。

上場地銀の外国人株主比率がジワジワと上昇している。PBRで見て「割安」なうえ、株主還元を要求しやすく、再編でエグジットストーリーも描きやすいことなどが背景にある。地銀の主要株主となった海外機関投資家は株主還元要求を強めており、地銀の中には有価証券の益出しによって配当原資を捻出する動きもある。日銀はこうした状況を「地銀のストレス耐性の脆弱化につながる」と憂慮するが、再編期待から外国人株主比率が一段と高まることも予期されている。

海外機関投資家が地銀株を狙う五つの理由

 上場地銀の外国人株主比率が上昇している。2018年3月末の上場地銀77社の平均は13.5%。10年度の7%から、13年度は10%、16年度は12%と上昇基調をたどっている。18年3月末時点における外国人株主比率の高い地銀を見ると、大手地銀に交じってスルガ銀行33.0%、大東銀行28.6%、沖縄銀行25.4%、福島銀行24.5%と、中小地銀が10位以内に名を連ねていることがわかる。
 ここで言う外国人株主とは、主に海外機関投資家のことを指すが、彼らが地銀株を狙う背景には「五つの理由がある」(市場関係者)という。①PBRで見て「割安」。②浮動株を「集めやすい」。③公的支援が充実しているので「つぶれない」。④要求しやすい「株主還元」。⑤地銀再編への期待から「エグジットストーリーが描きやすい」、の五つだ。

長崎地銀の統合承認で地銀株買いに拍車?

 まず、地銀株はどれほど割安なのか。上場企業の低PBRランキングを見ると、何と1~10位まで地銀が独占し、全上場地銀がPBR1倍未満という割安さ。PBR1倍未満とは理論上、会社が持っている純資産よりも時価総額のほうが安い状態のことであり、この時点においては株式を保有するよりも会社を清算したほうが株主にとって利益が大きいことを意味する。
 次に、地銀株をなぜ買い集めやすくなっているのか。背景としては、コーポレートガバナンス・コード(CGC)による政策保有株縮減の流れから、メガバンクなどが地銀株を手放している動きがある。さらに、「安定株主だった地元の上場企業も地銀株を手放す傾向にある」(市場関係者)といい、「地元の個人株主も増配で株価が上がるとあっさり売り抜ける傾向が見られる」(同)という。
 「銀行はつぶれない」という安心感も買い材料だ。金融システム安定の観点から、金融機関に対しては公的支援措置が充実している。とりわけ日本では、「貸出強化」を名目に自己資本が所要水準割れする前に予防的に資本注入できる金融機能強化法がある。「資本問題が起きる前に強化法で救われる」という憶測が安心材料になっており、一部からは「投資家のモラルハザードを招いている」と指摘されている。
 そして、地銀に対する株主還元要求のしやすさ。18年6月に改訂されたCGCでは、上場企業の政策保有株の縮減を明確化し、企業に資本効率を高める経営を要請した。海外機関投資家が狙う銘柄は、低ROEの企業でかつ現預金や政策保有株を多く抱え、高い自己資本比率という特徴がある。上場地銀のROEは18年3月末決算の実績でマイナス10.6~7.5%(単純平均で3.5%)であり、上場企業の全体平均10%を超える地銀は皆無だ。つまり地銀には積極的な株主還元を求めやすく、成長のための投資余地が乏しいことも配当や自社株買い要求に拍車を掛けている。
 最後に、エグジットストーリーが描きやすいことも海外機関投資家の目には魅力的に映る。地銀の再編時には「過去半年の平均株価に1割程度のプレミアムを付けて買収先の株式を買い取るのが慣例」(市場関係者)となっていることから、海外機関投資家の投資行動として“再編銘柄”が狙われやすい。福島県の地銀である大東銀行と福島銀行の筆頭株主は、いずれも米資産運用会社のプロスペクト・アセット・マネージメント(持株比率は大東銀行16.5%、福島銀行19.8%)。「プロスペクトは東邦銀行を中心とする福島の地銀3行合併をにらんで株式を保有しているのでは」(地銀担当アナリスト)との見方も強い。長崎地銀の統合が公取委から承認されたことで再編期待がさらに高まる可能性があり、大和総研の鈴木裕主任研究員は「再編の成功例が増えれば、再編狙いで地銀株を保有する外国人株主が購入を増やすのでは」と見る。

有価証券の益出しで配当捻出も

この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2018年9月24日号(3278号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから