きんざい Online

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2018.12.10.

広がる波紋! 違法の疑いが残る取引金融機関への税務調査

税務調査で何が行われていたのか、真相は藪の中に…(写真は国税庁)。

「失礼します。○○税務署から来ました」。そう声を掛けられ、支店奥の別室に通した経験を持つ金融機関職員は少なくないはずだ。税務調査、より正確に言うと、質問検査権の行使の一環で納税義務者の取引先や取引金融機関に対して、帳簿書類などの検査や当該物件の提出を求める反面調査である。この調査の妥当性が争点となった裁判の控訴審判決が11月7日、大阪高裁であり、裁判長が「違法の疑いが残る」と判示したことから、金融法務関係者の間で波紋が広がっている。


守秘義務を盾に証言を拒む税務当局

 まずは第一審および控訴審の判決文などから事件内容を振り返ろう。大阪府寝屋川市固定資産税課の元職員(懲戒免職)は2012年4月、日本中央競馬会(JRA)の5レースで1着馬をすべて当てる「WIN5」を的中させ、約5,600万円の払戻金を得た。さらに14年10月にもふたたび的中させ、約2億3,200万円を獲得。馬券の購入は元職員の楽天銀行ピアノ支店の口座を経由して行われた。こうして得た払戻金の大半が当該口座に預金として置かれ、課税対象の約1億6,300万円を申告せずに、所得税約6,200万円を免れていた。
 大阪国税局査察部所属の査察官が、別の脱税事件の任意調査で楽天銀行から顧客情報の開示を受けた際、JRAから多額の振込入金がある元職員の口座を発見。本件口座の情報を持ち帰り、元職員の競馬収入に関して申告されていない事実を突き止めた。その後、大阪国税局が告発し、16年10月、大阪地検特捜部が在宅起訴した。
 公判で元職員は脱税の事実を認めつつも、弁護側は、脱税額に加えて過少申告加算税や延滞税の支払いを求める行政処分のほかに、刑事罰を科すことは著しく不当だと訴えていた。しかし、大阪高裁の樋口裕晃裁判長は、懲役6カ月・執行猶予2年、罰金1,200万円とした第一審の大阪地裁判決を支持し、控訴を棄却した。元職員は上告せず、この判決が確定した。
 弁護側が公訴権の濫用だとし、無罪を主張したことの理由の一つが、「重大な違法調査がなされた可能性が否定できない」として違法収集証拠の排除を求めたからだ。
 いわゆる「横目調査」や「悉皆調査」が行われたのではないか──。国税職員が金融機関調査で口座情報などを調べる際、対象以外の情報を盗み見るなどの調査手法を指す。公判では、弁護側が証人尋問で担当査察官を追求するも、公務員が知りえた事実で職務上の秘密に関するものであることを理由に証言を拒絶。大阪国税局も、今回の調査の実態を公にすることによって「将来における査察調査において関係者の協力が得られなくなるとともに、脱税の発覚を防ぐ機会を脱税者に与えるなど、脱税犯の発生を助長し犯罪の予防や犯則事件の調査に重大な支障を及ぼすおそれ」などを理由に、証言の求めを拒絶した。

焦点となった銀行側の同意・・・
金融機関の従順姿勢も見え隠れ・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2018年12月10日号(3288号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから