きんざい Online

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2019.01.21.

出口の見えない迷路をさまよう日銀のETF買入れ

日銀保有のETFは“塩漬け”が濃厚(写真は東京都中央区の日本銀行本店)

金融緩和政策の一環でETFを買い入れている日銀が、日本の株式市場で最大株主になる日が近付いている。ただ、市場関係者の中には、「官製相場」への懸念や、企業の経営規律を弱めるといった弊害を危惧する向きもある。日銀のETF保有額はすでに約30兆円。いずれ売却しようにも、「完全売却まで100年はかかる」と指摘されている。加えて、景気下振れリスクが高まるなか、そもそも買入れを打ち切る出口にすら立てないおそれも浮上している。


20年度末には最大の株主に浮上


 日銀の株式市場におけるプレゼンスが高まっている。日銀が保有する2018年9月末時点のETF(株価指数連動型上場投資信託)の時価は約29兆円。43.5兆円の日本株を保有している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に次ぐ大株主だ。GPIFの資産額が時価の変動を考慮せず一定だと仮定した場合、日銀がこのまま予定どおりに年間6兆円のETFを買い続ければ、20年度末にはGPIFを抜いて日銀が最大の株主となる。
 だが、日銀のETF買入れを巡る市場の不安は深まるばかりだ。そもそもETFの買入れは2%物価目標に向けた政策の一環として、リスクプレミアムを低下させるために実施されている。黒田東彦総裁はリスクプレミアムを「株のように変動するものと確定利付き債券のように変動しないものとのリターンの差」(18年12月7日衆議院財務金融委員会)と説明し、「市場で言われているさまざまな指標を見ると、13年度以降、リスクプレミアムがはっきりと低下している」(同)と自信をのぞかせる。
 しかし、日本経済研究センターの左三川郁子氏は、「株式益回りと10年債利回りの差やCAPEレシオ、イールドスプレッドで異次元緩和開始以降のリスクプレミアムを見ると、はっきりと低下したとは言い切れない」と指摘する。仮に「はっきりと低下」していたとしても、それが物価上昇率や予想物価上昇率にどの程度効いているのか、「ETF購入の政策効果を測るのは容易ではない」(金融政策専門家)とされる。つまり、2%物価目標に向けたETF買入れの政策効果がわかりにくく、どこまで有効な施策なのか懐疑的な見方が強い。
 日銀が大量にETFを購入することへの批判の声も高まっている。一つは、後場の株価を押し上げているという買い支え批判であり、株式市場の実態を映さない官製相場になっていることへの懸念だ。そして浮動株の流動性を懸念する声。さらに、スチュワードシップ・コードによって企業と株主による「目的を持った対話(エンゲージメント)」が重視されるなか、「物言わぬ株主」である日銀の持株比率の上昇が企業の経営規律を弱めかねないことへの批判だ。また、株価下落時の含み損によって日銀財務への影響を懸念する声もある。
 これらの論点に対して、黒田総裁は「ETF買入れ額は株式市場の時価総額の4%程度で、歪みをもたらすことはない」などと隙のない官僚的答弁を繰り返し、日銀と市場の溝は深まるばかりだ。日銀がもし「市場は誤解している」と主張するならば、総括的検証のように、正攻法でETF買入れの政策効果を説明する以外ないだろう。

日銀ETFの売却は100年の計・・・
買入れ打切りも難しい状況に
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この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年1月21日号(3292号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから