新聞の盲点

一般社団法人金融財政事情研究会創立と同時に創刊された、金融の専門週刊誌『週刊 金融財政事情』に掲載のある記事になります。

2019.04.22.

間もなく世界を揺るがすLIBOR消滅問題

パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長も17年11月の講演で、「LIBORからの移行は大変な作業になる」と演説。写真はFRBの外観。

貸出や有価証券、デリバティブまで、あらゆる金融取引のベース金利になっている「LIBOR」。この世界共通の金利指標が2021年末に消滅する見通しになっている。当然、インパクトは絶大だ。各国は後継金利指標の開発に取り組むが、わずか3年弱で信頼できる指標に育つのか。21年末をまたぐ契約変更、後継金利指標をベースとしたシステム改修、市場リスク管理など、金融機関が数々の難題に直面するのは必至。市場のボラティリティーが高まることも危惧されている。


世界で4京円を超えるLIBOR参照取引

 LIBORがなくなる──。国際的に主要な金利指標であるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が21年末を期限に公表停止、すなわち消滅する公算が強まっている。
 12年にLIBORの不正操作問題が顕在化したことを受けて、金融安定理事会は14年夏に、可能な限り実取引のデータに基づいて決定される金利指標に改める方針を示した。銀行の信用リスクを含まない新たなリスク・フリー・レート(RFR)の開発と並び、LIBORの信頼性・頑健性向上のための改革を断行する方向性を取りまとめた。
 その改革途上にあった17年夏、英国・金融行為規制機構(FCA)のベイリー長官は、突如として21年末以降はリファレンス・バンク(パネル行)にLIBORを公表するためのレート呈示を強制しない意向を表明した。LIBORは複数のパネル行が呈示したレートに基づいて金利水準が決定する仕組み。ベイリー長官が言う「強制しない意向」とは、「パネル行から抜けてもいい」ということを意味する。パネル行を務める欧米の大手金融機関は、LIBORの不正操作を巡って巨額の制裁金や賠償金を課された苦い記憶があり、今後も訴訟リスクがくすぶることからパネル行から抜けたがっている。抜けるパネル行が続出することでLIBORの信頼性を保てなくなり、事実上の消滅に至るとみられている。
 LIBORを参照する取引残高は、世界全体で370兆ドル(1ドル=110円として4京700兆円)に上るといわれる。このうち米ドルLIBORだけで150兆ドル(同1京6,500兆円)と推計され、円LIBORだけで見ても金利スワップが2,453兆円、通貨スワップが108兆円、相対の貸出が68兆円、シンジケート・ローンが75兆円に及ぶ。LIBORが消滅すると、これらの取引に影響を及ぼすことになる。ところが、市場はあと2年8カ月で消滅することは知っていても、「事の重大さに気付いていないのが現状」(市場関係者)だといい、LIBORベースの取引は現在も「横ばいないし増えている」(同)という。
 日本ではLIBOR消滅に備える会議体として、日本銀行が事務局を務める「日本円金利指標に関する検討委員会」が18年8月に立ち上がった。他国の金融当局・金融機関も、焦眉の急を告げる事態への対応に乗り出している。

混乱必至の既存契約・・・
ヒストリカルデータなくリスク管理に支障・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年4月22日号(3305号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから