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2019.05.07.

利用者保護が課題になるペイロールカードへの給与支払い解禁

金融庁との調整も課題に浮上(写真は厚生労働省)。

日本でも資金移動業者が発行するペイロールカードへの給与支払いの解禁が現実味を帯びている。外国人労働者の利便性向上やキャッシュレス推進の観点から、厚生労働省を中心に早期の制度改正に向けた検討が進められている。ただ、資金移動業者には銀行のような厳格な規制が設けられていないので、「生活の糧」である給与を守るための利用者保護の枠組みづくりが重要な論点となる。また、制度改正に向けて、資金移動業者の監督を行う金融庁との調整も課題になっている。


外堀は埋まったペイロールカードの導入

 資金移動業者が発行するペイロールカード(給与支払いのためのプリペイドカード)への給与支払いを、日本でも解禁するための議論が熱を帯びている。
 日本では現在、労働基準法24条で、給与支払いは「通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と定めており、現金払いが原則となっている。ただし、例外として銀行口座や証券総合口座への支払いが労働基準法施行規則で認められており、銀行口座への振込が一般に用いられている。ペイロールカードへの給与支払いを認めるには、この例外の一つに加える必要があり、厚生労働省を中心に検討が進んでいる。
 議論の発端となったのは、2017年に開催された国家戦略特区ワーキンググループ。会議の中で、東京都と外国人就労支援を行う事業者が「外国人は銀行口座を開設することが難しい状況があり、資金移動業者が発行するペイロールカードへの給与支払いは、銀行振込に代替する手段となり(外国人労働者からの)需要が高い」と主張。ペイロールカードへの給与支払いを可能とする制度改正を求めた。
 資金移動業者の中には、外国人労働者向けの海外送金を中心としたビジネスを展開する事業者もいる。ペイロールカードで給与を受け取ることができれば、本国にいる家族への海外送金をシームレスに行えるなどのメリットも見込める。
 これに対し、労基法を所管する厚労省は「労働者の保護が第一であり、生活の糧である賃金について、特区や外国人など対象を絞り実証実験のかたちで試すことは適切ではない」(労働基準局賃金課)とし、「ペイロールカードへの給与支払いを認めるのであれば、すべての労働者が利用できる枠組みにする」(同)スタンスだ。
 国家戦略特区諮問会議で検討されている「キャッシュレス社会の実現」も、ペイロールカードへの給与支払いを後押しする。昨年12月に開かれた同会議で、規制改革を担当する片山さつき大臣が「結論が得られしだい制度化する」と説明しており、もはや外堀は埋まった印象だ。すでに米国で普及しているペイロールカードには、VISAやマスターカードといった国際ブランド機能も搭載された一体型になっている。日本でも同様のペイロールカードが導入されれば、キャッシュレス拡大に寄与することも期待される。3月19日に経団連が内閣府に提出した規制改革要望にも「電子マネー等の決済手段を賃金支払いとして認めるべきである」との提案があり、企業側のニーズも強いことがうかがえる。

課題は利用者保護の枠組みづくり・・・
金融庁との調整も課題に・・・

この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年4月29日-5月6日号(春季合併号・3306号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから