きんざい Online

スマートフォン、PCで、『週刊金融財政事情』の記事が読み放題(月額会員1,320円/月)になりました。記事単位での購入も可能です。※「週刊金融財政事情」は1950年に創刊された、金融界と歩みをともにしてきた日本で唯一の金融専門誌です。

2019.07.24.

“仮免許”でソロリ船出の「情報銀行」

6月21日、日本IT団体連盟は、三井住友信託銀行とフェリカポケットマーケティングを「情報銀行」の第1号として認定した。ただ、今回の認定はサービスそのものではなく、運営計画に対する認定で、いわば“仮免許”。健康・医療情報の取扱いに抵抗する日本医師会の反対もあって、現状、情報銀行では要配慮個人情報を扱えないため、「商材」たる情報の範囲も限定的だ。日本発の本格的データ利活用事業を謳う情報銀行は、新たなビジネスとして根付くのか。


後出しの仮免許制度

 情報銀行とは、個人が信頼できる事業者に自らの意思で預けたデータを、その事業者を通じて企業などの第三者に提供し、その報酬が金銭やサービスのかたちで個人に還元される枠組みだ。情報銀行の認定を受けなくても、こうしたサービスを提供することはできるが、個人が信頼できる事業者かどうかを判断しやすくするための仕組みとして、情報銀行の認定制度が設けられた。日本IT団体連盟(IT連)が、総務省および経済産業省が定める「情報信託機能の認定に係る指針Ver1.0」(指針1.0)に基づき情報銀行の認定団体となり、昨年末から認定申請を受け付けて審査を実施。今春に第1号認定を予定していた。
 審査の結果、三井住友信託銀行とフェリカポケットマーケティング(FPM)が6月21日に情報銀行の第1号として認定された。ただ、その中身は具体性に乏しい。「地域振興プラットフォーム」(仮称)で認定されたFPMは、現状では情報銀行モデルを地域で展開するということ以上の具体性はない。「『データ信託』サービス」(仮称)で認定を受けた三井住友信託銀行の益井敏夫常務は「具体的なビジネスプランは法規制の動向を踏まえて検討する」とし、7月16日時点で認定取得のニュースリリースすら出していない。
 それもそのはず。今回の認定は、いわば仮免許だからだ。2社が取得したのは「P認定」と呼ばれるもの。情報銀行の運営計画が「サービス開始可能な状態」であることを認定するものにすぎず、2年以内に通常認定を受ける必要がある。疑問なのは、P認定が“後出し”だったことだ。認定申請受付時にはP認定の概念はなく、三菱UFJ信託銀行や、大日本印刷・JTB(2社共同事業)などが、事業化前提の通常認定を目指して申請を行っている。しかしその後、各社の具体的な動きは見られず、3月20日になって突如、P認定の導入を発表。その後3カ月で認定という運びになった。
 なぜ、P認定という制度が誕生したのか。まず考えられるのは、認定の壁の高さだ。IT連の井上貴雄情報銀行推進委員会委員長は、「情報銀行は新しい事業モデルで、そのマネジメントシステムをPDCAで回し切っていることが認定の前提」と話す。申請事業者は情報銀行に係る実証実験を行っていたが、その規模は数百人単位のものが多く、IT連として「PDCAのうち、PとD程度の評価」(井上氏)しかできなかったという。本認定が難しいために、P認定という仮免許をつくることで、情報銀行への期待や話題をつないだものとみられる。
 次に、銀行界固有の事情がある。改正銀行法が5月31日に成立し、銀行の付随業務として、一定の条件のもと銀行が保有する顧客情報を第三者に提供できることが明文化された。施行は公布から1年以内だ。第三者提供が付随業務となれば、従来の「銀行業高度化等会社」という子会社方式ではなく、銀行本体が情報銀行となることのお墨付きになる。ただ、施行に伴って措置される法令なども見えないなか、現状で情報銀行のビジネスモデルを確定することのリスクを銀行サイドが避けた面もあるようだ。

既得権益を守る医師会の抵抗・・・
事業者が見据えるのは通常認定・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年7月22日号(3317号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから