新聞の盲点

一般社団法人金融財政事情研究会創立と同時に創刊された、金融の専門週刊誌『週刊 金融財政事情』に掲載のある記事になります。

2019.08.19.

日本郵便の暴走が引き起こした「かんぽ不正問題」


かんぽ生命の不適切な保険販売は、日本を揺るがす不祥事に発展した。不正の疑いがある保険契約は18万件超に上り、全契約3,000万件の調査と営業自粛に追い込まれた。不適切販売の「大きな理由」(長門正貢日本郵政社長)となったのは、郵便局の行き過ぎたノルマ営業。グループ内で圧倒的な力を持つ日本郵便の暴走を止められなかったガバナンスの機能不全は深刻だ。官業時代からよりどころとしてきた地域の信頼を裏切った今、日本郵政グループの将来を展望するのは難しい。





政府首脳が徹底調査を指示

 「徹底的に調べろと指示した」。参院選直後の7月下旬、政府首脳は憤まんやるかたない表情でこう語った。かんぽ不正問題が発覚してから1カ月あまり。半年以上にわたって保険料を二重払いさせるなど悪質な契約実態が連日報道される中で、対応が後手に回ってばかりの日本郵政に業を煮やしていた。
 日本郵政グループは、持株会社である日本郵政の下に、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵便の3社がぶら下がっている。日本郵便は郵便局を束ねており、ゆうちょ銀やかんぽ生命が扱う金融商品の営業を担っている。
 一連の問題に火を付けたのは、有力地方紙である西日本新聞のキャンペーン記事だった。販売ノルマに苦しむ郵便局の営業実態を暴く連載を始め、今年6月には顧客に不利な条件で保険契約を乗り換えさせていると報道。全国紙が追随して一気に批判が広がった。かんぽ不正問題の口火を切った西日本新聞は新聞協会賞を申請したという。
 当初、日本郵政グループの反応は鈍かった。最初の報道が出た直後の6月25日の記者会見で、長門社長は法令違反を否定。「顧客本位の営業に向けた反省材料」との認識を示しただけだった。7月上旬に保険料の二重徴収が2.2万件に上ると報じられると、横山邦男日本郵便社長と植平光彦かんぽ生命社長が7月10日に記者会見を開いて不適切契約を謝罪。その後、郵便局によるかんぽ生命商品の営業自粛も決めた。
 7月31日にようやく日本郵政の長門社長が記者会見し、「信頼を大きく裏切った」と非を認めて謝罪した。さらに2,000万人が保有する3,000万件の全契約で不利益の有無を調査すると表明。かんぽ生命商品のノルマについては、2019年度は設定せず、20年度以降はフローベースからストックベースの指標に見直す。
 かんぽ不正問題は経営問題の枠を超え、各方面に影響を与えた。郵政株が下落したため、国は9月にも行うはずだった第三次郵政株売却を先送りする見通しだ。売却益は東日本大震災の復興財源に充当されることになっており、震災復興が遅れることになりかねない。また、郵便局はかんぽ生命以外の民間保険(がん保険と自動車保険を除く)の営業自粛も決めており、生損保各社は販売戦略の見直しを強いられている。


「郵便局問題だ」・・・
ユニバーサルサービス再考も・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年8月19日号(3320号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから