きんざい Online

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2019.11.04.

日銀の姿勢も問われる口座維持手数料を巡る議論

日銀が追加緩和をチラつかせていることもあって、「マイナス金利の深掘りが実施されれば口座維持手数料の導入もやむなし」との声が高まりつつある。ただ、口座維持手数料を一斉に導入した場合には競争法上の問題が取り沙汰される可能性が高く、横並びの姿勢は許されない。他方で、預金口座へのマイナス金利のコスト転嫁は「金融政策の波及経路」として機能するとも考えられる。2%物価目標の到達が見通せないなか、日銀の姿勢も問われている。


導入できれば「深掘り」の影響を相殺

 「貸出金利が一段と低下した場合、収益の下押し圧力に耐え切れなくなった金融機関が預金に手数料等を賦課し、預金金利を実質的にマイナス化させることも考えられる」──8月29日の熊本県金融経済懇談会で、日本銀行の鈴木人司審議委員(元三菱東京UFJ銀行副頭取)がこう発言した。
 鈴木氏の発言は、日銀の追加緩和が口座維持手数料の導入につながり、個人の消費マインドの低下を惹起しかねないことを指摘するものだ。これをきっかけに、日銀の黒田東彦総裁が「追加緩和の選択肢の一つ」と公言しているマイナス金利の深掘りが実施された場合には、「銀行が口座維持手数料の導入に動くかもしれない」という見方が浮上している。
 全国銀行協会の髙島誠会長(三井住友銀行頭取)は「金融政策等とは峻別して論じられるべきもの」(9月19日の会長会見)との姿勢を貫く。ただ、マイナス金利が深掘りされた場合、収益上のインパクトが大きいのは事実だ。マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストの試算によれば、マイナス金利がさらに0.1%深掘りされた場合、収益へのマイナス影響(2019年度経常利益計画対比)は大手行で約5%、地銀で約11%に上る。仮に口座維持手数料(月100円)を導入すれば、大手行で3~4%、大手地銀で8~9%のプラス効果があり、かなりの部分を相殺できるという。
 もっとも、マイナス金利の深掘りの有無にかかわらず、“異次元緩和”の影響から今後もストックベースで貸出金利の低下は続く見通しだ。金融機関は店舗統廃合などの経費削減を進めているが、収益の低下が続けばいずれサービス利用者(預金者)へのコスト転嫁は避けて通れない。海外では小口の預金者から口座維持手数料を得ることは一般的。ドイツでは大口預金者に対してマイナス金利を適用する銀行もあり、「懲罰金利」だとして議論を呼んでいる。

一斉に導入すれば競争法上の問題にも・・・
国民的議論を訴えた「中曽講演」・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年11月4日号(3330号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから