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2019.12.16.

増加する地銀の与信費用、越境貸出にブレーキも

地銀の2019年9月期決算で、与信費用の増加が鮮明になった。その要因を探ると、クレジットサイクルの変化や粉飾決算の増加、誤った事業性評価、自己査定(資産査定)の弛緩、越境貸出の増加、検査マニュアル廃止前の保守的な引当運営など、多様な事情が絡み合っていることがわかる。地銀のコア業務純益が落ち込む中で、これ以上の与信費用の増加は当期利益に大きな影響を与えるほか、増加傾向にあった越境貸出にもブレーキがかかりそうだ。


与信コスト増加の背景
 地銀における与信費用の増加が顕著になっている。SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストによれば、19年9月期決算の上場地銀全体の与信費用(連結)は前年同期比32.5%減だが、スルガ銀行を除くと同75.1%増となり、「全体として増加基調であることがうかがえる」という。貸出残高に対する与信費用比率も、スルガ銀行を除くと前年同期の5.7bpから9.6bpに上昇している。
 過去との対比では与信費用はいまだ低水準といえ、金融庁関係者からは「問題視する水準にはない」という声も聞かれる。ただし、「与信費用比率が約40bpまで上昇した場合にコア業務純益(除く投信解約益ベース)がなくなる現状を考えれば、絶対水準としては高くなくても、利益へのインパクトは大きい」(SMBC日興証券の佐藤雅彦アナリスト)という点は見逃せない。
 与信コストの増加の理由としては、クレジットサイクルの変化、中小企業金融円滑化法により延命した、いわゆる「ゾンビ企業」が限界を迎えたことなどがしばしば指摘される。だが、要因はそれだけではなさそうだ。
 9月期決算では、粉飾決算の発覚による与信費用の増加が目立った。全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)は、11月13日の会長会見で融資先の粉飾決算が、企業の貸倒れに備えた与信費用増加の一因になっていると指摘。東京商工リサーチによれば、19年1月から10月における粉飾決算を理由とした倒産は前年同期比2倍に増加している。
 さらに、「事業性評価に基づく貸出増加が与信費用増加の要因」(地銀担当者)だとする声もある。この地銀では、事業性評価シートをもとにヒアリングを行い、一定以上の評価項目をクリアした先には担保・保証に依拠しない貸出を実行している。しかし、「大して目利き力もない中で事業性評価貸出の件数増加を急いだ結果、評価を誤って貸倒れ懸念が生じている先も相当数ある」とし、そうしたケースでは「担保・保証がないため多額の貸倒引当金を積む必要が生じている」(同担当者)という。
 ほかにも与信費用が増加している要因として、金融庁や財務局による金融検査が資産査定を中心とする定例検査から、オフサイトを重視するモニタリングに変わったことも影響しているようだ。ある地銀幹部は、「従来の定例検査のもとでは当局の指摘による債務者区分の変更が生じないように、日ごろから厳格な自己査定に取り組んでいた」と話す。だが、金融検査のあり方が変わり、収益環境も悪化するなか、「貸出を増やしやすくするために債務者区分を維持するバイアスがかかりやすい」といい、「正常先や要注意先などに据え置かれた企業がいきなり破綻懸念先にランクダウンしたり、突発的に倒産したりすることで、多額の与信費用を計上するケースが増えている」(同幹部)という。

越境貸出先で多額の引当金を計上・・・
検査マニュアル廃止前の駆け込み引当て・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2019年12月16日号(3336号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから