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2020.01.07.

ネット証券「手数料ゼロ」の衝撃

2019年12月以降、ネット証券各社が株式の委託手数料を無料とする取引対象範囲を広げたり、投信販売手数料を撤廃したりする施策を連日のように発表している。顧客の新規獲得やつなぎ止めが狙いであり、今後は株式の委託手数料の「撤廃」にまで踏みきるかが焦点となる。しかし、代替できる収益源が確保されないまま無料化に走ると、会社の事業運営には赤信号がともる。ネット証券各社は、手数料収入に依存してきた収益構造からの転換が急務となりつつある。

止まらない手数料無料化の波

 ネット証券で売買手数料を無料化する動きが相次いでいる。最初に仕掛けたのはSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝社長。10月30日の決算発表で、傘下のSBI証券において「3カ年計画で現物株式も含めたすべての手数料の完全無料化を目指す」と宣言した。業界に衝撃が走り、12月2日にはauカブコム証券が信用取引の手数料を撤廃すると表明し、松井証券も同日、投信販売手数料の撤廃を発表。これを皮切りに、手数料ゼロ競争の幕が開けた。
 その後、連日のように手数料の無料化施策が打ち出され、ネット証券大手5社(SBI、楽天、マネックス、松井、auカブコム)は、投信の販売手数料を2020年1月半ばまでにすべて撤廃することを決定している。さらに松井証券は12月20日から、SBI証券と楽天証券は12月23日から、現物株式や信用取引で手数料を無料とする取引の上限額を、1日10万円から50万円に広げる方針だ。
 日本のネット証券で手数料無料化が進む背景には、10月に米国の大手証券会社チャールズ・シュワブが株式の手数料撤廃を発表するなど、手数料ゼロの動きが急速に進んだことが挙げられる。マネックス証券副社長の萬代克樹氏は「(手数料無料化は)世界的に必然の流れ。日本にもこの波が来るのは目に見えているため、顧客確保のためにもいち早く手を打つ必要がある」と話す。
 ただし、米国と日本では経営環境が異なる点に注意が必要だ。信用取引の金利は日本が2~3%なのに対して米国では8%前後と高く、収益源も多岐にわたっている。チャールズ・シュワブでは銀行やアセットマネジメント会社も持っており、伝統的なブローカレッジ(取引仲介)業務からの収入は全体の10%未満。手数料収入に頼らないビジネスモデルを確立している。ほかにも米国では、日本にはない「ペイメント・フォー・オーダーフロー」と呼ばれる取引所や高頻度取引業者(HFT)に個人の注文を出すことでリベートを受け取る仕組みが一般的になっており、そこからの収入が一定程度あることも見逃せない。
 S&Pグローバル・レーティング・ジャパンの館野千鶴アナリストは「日本で耐えうるビジネスモデルが存在しない中で、手数料無料化に動くことは業界全体にとって痛手になる」とし、米国と同様の無料化を進めるのは時期尚早との見解を示す。

現物株式の手数料撤廃なら収益悪化が鮮明に・・・
対岸の火事では済まない対面型証券・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2020年1月6日号(3337号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから