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2020.02.24.

強まる政治圧力、日銀は「デジタル円」発行に動くか

中央銀行デジタル通貨(CBDC)の日本版となる「デジタル円」の発行を促す政治圧力が強まっている。自民党のルール形成戦略議連がデジタル人民元の対抗軸としてデジタル円の発行を準備するよう促したほか、同党金融調査会もデジタル円に関心を寄せる。ただ、日本におけるCBDCの発行効果が定かではない現状、「動きづらい」(日銀幹部)のが本音。日銀は当面、CBDCへの“関心”を強める立ち回りで政治圧力をかわす「ローギア」戦略を採りそうだ。


自民党が提言書を官邸に提出

 「政府・日銀においては(…中略…)検討に留まることなく、実用化を想定して、円のデジタル化(デジタル円)について準備すること」──。これは自民党のルール形成戦略議員連盟(甘利明会長)が2月7日に取りまとめた提言書「デジタル人民元への対応について」に記載された内容だ。提言によれば、にわかに現実味を帯び始めたデジタル人民元が中国で導入された場合、資源国を含む途上国や米国の非友好国などで急速に普及する可能性があるという。
 中国がデジタル人民元の発行をもくろむ背景には、米国との貿易摩擦が強まる中で、CBDCの分野で先んじて人民元の地位を確立する狙いがあるとみられる。中国の広域経済圏構想「一帯一路」の参加国でもデジタル人民元が普及すれば、世界の基軸通貨であるドルの地位が揺らぎ、米国の経済制裁力は大きく低下する。日本にとっても、安全保障上の問題に加え、金融政策や金融システムへの影響が懸念されることから、デジタル人民元の動向は無視できない。
 自民党議連は、デジタル人民元への有効な対抗策になり得るのが、円を含めた主要通貨のデジタル化と考えている。海外当局とも連携しながら「円のデジタル化も含めた対応策」を早急に検討・準備するよう提言しており、菅義偉官房長官に提言書を手渡した。
 同じ2月7日、自民党金融調査会(山本幸三会長)のデジタルマネー推進PTも会合を開き、ここでも日本におけるCBDCの発行について議論された。日銀に強い影響力を持つ山本会長がカンボジアのCBDCに関する出張報告を行い、配布された資料には「特に私が関心を寄せている中央銀行デジタル通貨発行」と記されている。さらに、カンボジアにCBDCを含む決済プラットフォーム「バコン」を提供した日本のIT企業ソラミツが講演し、日本におけるCBDC発行形態を提案した。
 海外に目を向けても、CBDCに関する検討が急ピッチで進み始めている。CBDC議論に火を付けたフェイスブックのリブラ構想(昨年6月発表)は行き詰まりつつあるが、デジタル人民元は実証実験の開始が間近といわれる。この動きに押されるように、日本や欧州、英国などの六つの中銀が1月21日、CBDCに関する知見を共有するグループの設立を発表した。
 CBDCから距離を置いているようにみられていた米国でも、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が昨年11月、下院議員への書簡の中で「CBDCのコストと利点について注意深く評価・分析を続ける」と言及。6中銀連合には加わらないものの、パウエル議長は2月12日の米上院銀行委員会で「CBDCについて最前線で分析することがわれわれの責務」と発言し、他の中銀と協業していくことを明かした。
 国内の政治圧力に加え、海外動向も騒がしく、デジタル円の発行を促す「日銀包囲網」が徐々に張られているようにもみえる。

カンボジアでは金融包摂に貢献・・・
日銀は当面、ローギア戦略か・・・


この記事の続きは『週刊 金融財政事情 2020年2月24日号(3344号)』に掲載されております。『週刊 金融財政事情』の詳細はこちらから