信用保証協会の業務および信用保証の法律的性格はどのようなものか
信用保証協会は、中小企業者等が金融機関から借入れ等をする場合、その借入金等の債務を保証すること(信用保証)を主たる業務としている。そして、信用保証協会の行う保証の法律的性格は民法上の保証であるとされている(判例・学説)が、実際の業務は、金融機関との間で特約をもって保証債務の履行方法、範囲等について同法の規定と異なる保証約定を設け運用されている。
信用保証協会は信用保証協会法という特別法に基づく法人であり、中小企業振興を目的に、中小企業者等が銀行その他の金融機関から資金の貸付、手形の割引を受けること等により、金融機関に対して負担する債務の保証を主たる業務としている機関である(平成24年9月現在、都道府県および関係市52協会)。
そして、この具体的な業務の運営方法は各信用保証協会の定款、業務方法書によって定められ、また実際の保証の内容・手続等は、金融機関との間に締結されている「約定書」「事務手続要領」ならびに個々の保証に際し金融機関宛て交付する「信用保証書」によっている。
信用保証協会の行う債務の保証、すなわち信用保証の法律的性格については、かつて通常の民法上の保証であるのか、それとも信用保証協会法に基づく特殊な保証であるのかということで裁判上争われたケースがあるが、いずれも信用保証協会の行う信用保証は他に特別な法的規定がない以上、民法上の保証であるとしている(東京高判昭35.10.26金法258号5頁、札幌高函館支判昭37.6.12金法315号6頁)。
その意味で、全国信用保証協会連合会が昭和38年に作成した全国統一の約定書例においては、民法上の保証規定を前提にこれと異なる種々の特約をしている。
このことは、信用保証協会の信用保証が民法上の保証であるとはいっても、信用保証協会業務の公共的性格から、前述の約定書によって、いくつか同法と異なる特約をし、保証機能を円滑に作用させようとするものである。
特約の主な内容をあげれば、次のとおりである。
① 保証債務の履行の範囲は、民法では「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する」(同法447条1項)となっているが、信用保証協会の場合は、保証債務の履行の範囲を主たる債務に利息および最終履行期限後120日以内の延滞利息(損害金)を加えた額を限度としている(信用保証協会保証契約約定書例6条2項)。
② 連帯保証は催告、検索の両抗弁権(民法452条・453条)を有しない(同法454条)が、信用保証協会の場合は、主債務者の最終履行期限後90日を経ないと原則として金融機関は信用保証協会に対して保証債務の履行の請求はできない(信用保証協会保証契約約定書例6条1項)。また、同約定書例9条では、債務者が保証付借入債務を返済期日までに返済しない場合でも、プロパー債権の取立と同じ方法で金融機関はその保証付債権についても取り立てなければならないとしている。
③ 保証債務の履行請求権については、これの存続期間(2年)が定められており、金融機関は最終履行期限後2年を経過すると、いかなる場合でも保証債務の履行の請求ができないとしている(信用保証協会保証契約約定書例7条)。すなわち、この期間は除斥期間である。
④ 有効に保証契約が成立しても、後日、保証債務の履行請求の際、㋑旧債振替(旧債償還)、㋺保証契約違反、㋩金融機関の故意・重過失によって被保証債権について回収不能の事実が判明したときは、信用保証協会は保証債務の履行につき免責条項の適用をすることとなる(信用保証協会保証契約約定書例11条)。