破産とはどのような手続か
総債務を完済する見込みのない債務者につき、その財産を強制的に換価して、総債権者に公平に弁済することを目的とする裁判上の手続である。
破産手続は、基本的に、法人または自然人である債務者が経済的に破綻し、債務を完済する見込みがない場合に、裁判所の関与のもとに強制的に財産を換価して総債権者に公平な金銭的満足を与えることを目的とする裁判上の手続である。会社更生や民事再生が企業の維持継続を図ろうとするのに対し、破産では企業や個人の財産が清算されるところが異なる。
これに対し、特別清算は、裁判所の関与のもとで行われる清算手続である点においては、破産手続と同じであるが、手続の対象となるのが株式会社に限られ(ただし、清算投資法人、清算相互会社および清算特定目的会社については、株式会社の特別清算に関する規定を準用している。投信法164条、保険業法184条、資産流動化法180条参照)、また申立の前提として会社が清算手続に入っていることが必要となる点、債権者への弁済が債権者集会の多数決等を前提に行われる点等において、破産手続とは異なる。また、同じ清算手続であっても裁判所の関与がある点で清算型任意整理(私的整理)とも異なる。
破産手続は、債権者または債務者(法人についてはその理事、取締役等、相続財産に関しては相続人等、信託財産に関しては受託者等も含む)からの裁判所に対する申立(破産法18条・19条・224条・244条の4)、または職権をもって(会社法574条1項・2項、会更法252条1項・2項、民再法250条1項・2項参照)始まり、必要に応じ財産に関する保全処分などがなされ、破産手続開始の原因となる事実が認められ、破産障害事由がなければ(破産法30条1項各号)、破産手続開始の決定がなされると同時に、基本的には、破産管財人の選任がなされ、破産者の総財産(ただし、自由財産を除く(同法34条3項・4項等参照))は破産財団を構成し(同条1項)、破産財団に属する財産の管理・処分権は破産管財人に専属し、破産管財人の管理下に入る(同法78条1項)。
次いで債権の届出、債権調査が行われるとともに、この間破産管財人によって破産財団の調査・管理が行われ、財産の換価・処分が進められる。また、債権者集会が招集され、破産手続の進行が報告され、債務者財産の換価・処分終了後、債権者への配当が実施され、最終の計算報告が債権者集会においてなされ、清算手続が終了することとなる。
破産者に対する破産手続開始決定前の原因に基づく債権は破産債権となり、原則として破産手続によらなければ弁済を受けられない(破産法100条1項)。すなわち、債権届出期間内(ただし、届出期間経過後であっても、調査期間満了前または調査期日終了前であれば、債権届出を受けることができる(同法119条1項・122条1項))に届け出た債権は債権調査手続において調査がなされ、破産管財人もしくは他の届出債権者から異議がなければ債権は破産手続上確定し、その債権額に応じ配当を受けることになる。
ただし、破産債権者が別除権または相殺権を有する場合等は、破産手続によらないで権利を行使することができる。破産債権に基づいて行われた破産財団に属する財産に対する強制執行や仮差押えのうちすでにされているものは効力を失い、また新たに行うことも禁じられる(同法42条1項・2項)。
また、責めに帰することのできない事由によって、調査期間経過前または調査期日終了前に届け出られなかった場合において、その事由が消滅した後、1カ月以内に限りその届出をすることができる(同法112条1項)。
通常、破産手続開始申立から破産手続開始決定までの期間は、当然ながら事案に応じて異なってくるものではあるが、会社等の法人破産の場合と自然人の個人破産の場合とで異なることがある。前者は申立後、破産手続開始決定まで数日を要することが多いと思われるが、後者は、事件数の増大に対する迅速な処理の目的から、東京地方裁判所や大阪地方裁判所にみられるように、一定の要件のもと、同時廃止で処理される事案について、申立日の即日に破産手続開始の決定がなされる場合がある。