IV巻 担保 編
40001建築中の建物の担保取得

建築中の建物を担保にとることができるか

結論

建築中の建物でも、建物と認定される段階まで工事が進行しており、かつ、抵当権設定可能な状態に至っていれば、抵当権設定による担保取得が可能である。


解説
◆建物と認められる時期

民法上抵当権の設定が認められているのは不動産である(民法369条1項)から、建築中の建物も、不動産と認められる段階まで工事が進行していないと、原則として抵当権の設定は認められない。建物であるためには、まず土地に定着していることを要する(同法86条1項)が、どのような状態になったときに建物となるかが問題となる。判例は、建築過程中、建物と認められる時期につき、木材を組み立て、屋根を葺いただけではまだ建物とはいえない(大判大15.2.22民集5巻2号99頁)が、屋根が葺かれ、周壁として荒壁が塗られた程度に至れば建物になる(大判昭10.10.1民集14巻18号1671頁)としている。

◆抵当権設定登記の可能時期

現在の登記実務においては、建築中の建物がたとえ民法上の不動産と認められる段階になったとしても、登記事項が確定するまで工事が終了していないと、表題登記を申請することができず、また抵当権設定者を所有者とする所有権保存登記の後でなければ抵当権設定登記を受理してもらえない。抵当権の設定は可能であっても、現実に抵当権設定の登記が可能にならなければ、抵当権の設定をした意味がないので、この点に注意を要する。

登記実務では、「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう」とされており、それが何に使用される建物か外観によって建物の種類が確認できるまで工事が終了していなければならない。

◆実務上の問題点

不登法では、土地建物の表示に関しては、登記官は実質審査主義に基づき現地に赴き、現場を確認することができるとされている(不登法29条)。ところが実際には、登記所の実務としては、登記官が特に問題であると判断した場合にのみ現地調査を行い、土地家屋調査士による表示登記の申請があれば現地調査を省略していることも少なくない。とすれば建物であるか否かの認定は実質的には登記官と土地家屋調査士の判断によることとなる。

ここで最も問題とされるのは、まだ完成しない、すなわち建物と認定されない段階の建築物につき、表題登記が行われ、保存登記を終えて担保権の登記を行った場合である。この場合実体上はその担保権は無効であり、また後日、登記官がまだ建物でないことを発見した場合は、直ちに表題登記を抹消する可能性があり、この場合、担保権の登記は消滅することとなる。