V巻 回収・担保権の実行・私的整理・法的整理 編
50575協議会スキームと経営者保証ガイドライン

協議会スキームにおいて、経営者保証ガイドラインに基づいて経営者等の保証債務の整理はできるか

結論

協議会スキームでは、経営者保証ガイドラインが公表されたことを受けて策定された「中小企業再生支援協議会等の支援による経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理手順」が定める「一体型」または「単独型」のいずれかの手続に基づいて、保証債務の整理を行うことが可能である。


解説

経営者保証ガイドラインが公表されたことを受けて、平成26年5月、中小企業庁は、協議会スキームにおいて経営者保証ガイドイランに基づく保証債務の整理を行う場合の支援業務の内容、手続、基準等を定めた「中小企業再生支援協議会等の支援による経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理手順」(以下「整理手順」という)を策定・公表した。また、平成27年4月、整理手順について実務上留意すべき事項を取りまとめた整理手順QAも公表している。

整理手順には、主たる債務の整理について協議会スキームを利用し、同スキームと並行して保証債務の整理について整理手順に準拠して行う「一体型」と、主たる債務の整理について法的整理手続(破産手続、民事再生手続、会社更生手続、特別清算手続)もしくは協議会スキーム以外の準則型私的整理手続(事業再生ADR、私的整理ガイドライン、特定調停等)を利用し、保証債務の整理について整理手順に準拠して行う、または主たる債務の整理について協議会スキームが終結した後に保証債務の整理について整理手順に準拠して行う「単独型」の二つの手続を定めている(経営者保証ガイドライン7(2)イ・ロ、整理手順QA・Q4)。

一体型と単独型の手続の流れは基本的に同一で、以下のとおりとなる。

① 窓口相談(第一次対応)(整理手順3)

② 弁済計画策定支援(第二次対応)(整理手順4(1)(2))

③ 個別支援チームの編成(整理手順4(3))

④ 弁済計画案の作成(整理手順4(4)(5))

⑤ 弁済計画案の調査報告(整理手順4(6))

⑥ 債権者会議の開催(整理手順4(7))

⑦ 弁済計画の成立・完了(整理手順4(8))

⑧ 弁済計画の不成立・終了(整理手順4(9))

なお、整理手順に基づいて一体型で保証債務の整理を行うためには、主たる債務の整理に関する協議会スキームが終結(再生計画策定支援の完了)するときまでに、整理手順に基づく保証債務の整理を開始(第二次対応)しておく必要がある点に留意が必要となる。また、単独型は、一体型とは異なり、原則として協議会スキーム以外の手続で主たる債務を整理するため、一体型と比べて対象債権者の理解を得ることが困難となる。特に主たる債務の整理が法的整理手続による場合、債権者は保証人から回収を図る意向が強くなるため、弁済計画案を成立させることは容易ではない。そこで、保証人が整理手順において負担する費用(個別支援チームに参画する弁護士費用等)や弁済計画案策定等に要する時間が弁済計画不成立によって無に帰することを避けるため、単独型で保証債務を整理する場合は、原則として保証人および支援専門家においてあらかじめ対象債権者との間で金融調整を図ったうえ、全対象債権者の積極的な事前同意を得る必要があるとされている。